脚本を書きました、映画「犬部!」の公開日が決まりました。
ことしの7月22日!
夏休みが始まったばかりの頃ですね。
その頃、コロナがどうなっているかわからないけど、劇場でたくさんの人に見てもらえたら
うれしいです。
映画「犬部!」の脚本を最初に頼まれたのは、2018年の夏のことですから、
はや3年もたったのですね。
最初はね、正直にいうと、断ったんですよ、脚本を書くことを。
原案になったノンフィクション「犬部!」(片野ゆかさん著)は読んでいて、いい話だとは思ったんですが、これを、ドラマ化するのは結構難しいと思って。
というのは、理由は2つあって、一つは時代設定の問題。
実際の犬部ができたのは、2000年代の初めで、(犬部パート1とパート2がある)、
その頃と今では、動物保護をめぐる環境が大きくちがっている。
20年前のお話として描くことはできるんだけど、動物愛護に詳しいひとじゃないと、細かいところで誤解が生じる可能性がある。
たとえば、動物愛護法も改正されたし、2000年代の頭は、まだ、「保護犬」とか「保護猫」という言葉は人口に膾炙していないし、動物愛護団体も少なかったし、そんな状況のなかで、
学生が保護活動をすることのたいへんさを際だって伝えるのはなかなか難しい。
一方で、この話を現代に置き換えてしまうと、殺処分数も20年前に比べたら劇的に減っているし、保護活動もそれほど珍しいものじゃなくなったので、これはこれで、学生達の苦労が伝わりにくい。「時代設定が難しい」が一つ目の理由でした。
もうひとつは、「面白おかしい動物青春もの」だったら、自分は向いていないなと。
動物保護については、わりとがっつり取材してきたので、
「面白おかしい動物もの」を作ることに抵抗がありまして。
そういう作品の影響で、勢いで犬や猫を飼ってしまうひとや、
人気の犬種、猫種のブームを作ってしまうのは、よくない。
結果、捨てられる犬猫が増えるので。
それと、私は「面倒くさいひと」なんですよね、作り手として。自認してますが。
なので、そのあたりのことをプロデューサーにお話ししまして、
「面倒くさいけど、いいですか。動物愛護をテーマにすると、思ってもみない問題にぶち当たることがありますけど、大丈夫ですか?」と聞いたんです。
そしたら、プロデューサーがね、「大丈夫です。覚悟できてます」と。
その姿にぐっときて、引き受けることになったんです。
(プロデューサーは私に頼んだことをのちにきっと後悔したと思うけど。笑)
あと、やっぱり、「犬部」の活動はすばらしいから、みんなに知ってほしかったし。
で、脚本を作ることになって、取材のために、犬部を作った獣医師の太田快作さんに会いました。2018年の秋くらいだったか。
そこで話をして、「なんだ、この人は!なんという獣医さんなんだろう」
と衝撃を受けました。
それまでも動物愛護関係の獣医さんには何人かお会いして来ましたけど、飛び抜けた方でした。
ちょうどその頃、「家族になろうよ」(NHKBSプレミアム)という犬猫保護に関する番組を作っていたので、すぐにゲストに出てもらうことにしました。太田さん、面白いから。
それが放送になったのが、2019年の2月末でした。
番組はとても好評でしたが、生放送ということもあり、太田さんの面白さをいまひとつ、
伝えきれなかったという思いがあり、その年の春から取材を始めました。
その頃、すでに、映画「犬部!」の脚本はだいたい書き終わっていたかもしれないけど、
取材は勝手にやっていたわけです。
どこで放送するとか、まあ、考えずに、取りあえず撮っておこうと。
いつものことですが。笑。
取材を続けていた夏、太田さんの愛犬、花子が倒れました。
それも撮らせてもらって、のちに「花子と先生の18年」(ザ・ノンフィクション2020年放送)となったのでした。
だから、映画とドキュメンタリーが前後しておりました。
実際の映画における時代設定は、犬部結成時と、その後を描くことで、なんとか乗り切りました。犬部を作ったやつらが今は何をして、何と闘っているのか、そこらへんを頑張って書きました。
脚本が完成して、主演が林遣都さんに決まったと聞き、最高じゃないですか!と思いました。
若手のなかでも、ダントツの演技力だし、熱くなる部分とクールな部分の両方を持って
演じることができるし、「犬部!」の主人公にぴったりだと思いました。
これはよいものになるにちがいないと確信しました。
撮影現場にもちょこっとお邪魔しました。
とてもとても暑い時期でしたが、林遣都さん、中川大志さんたちが、犬と猫にまみれながら、
篠原哲雄監督のもと、撮影していました。たいへんそうだったけど、楽しそうでした。
(篠原監督は、実はずーっと前からの知り合いでして。面倒な私の脚本づくりによくぞ
おつきあいくださったと今は感謝しています)
そして、完成して、試写を見せてもらいました。
いやー泣きましたよ。泣きに泣いた。笑。
自分で脚本書いて、台詞書いてますから、あらすじから、次に誰が何を言うか、
知り尽くしているんですよ。
でもねー、やっぱり、紙面と実写はちがうんですよね。俳優が演じることで、台詞に魂が込められるんです。
(込められない場合もあるけど、それは失敗になってしまうんですね)
林遣都さんがね、犬と猫の命のために懸命にはたらくひとをホントによく演じてくれてました。ふるえました。
そして、親友役の中川大志さんも、実は、結構難しい役柄だったんです。
それをね、見事にやり抜いてくださいました。あるシーンの立ち姿にくらっとしました。
脚本を引き受けて良かったと、しみじみ思いました。
そんなわけで、映画「犬部!」をよろしくお願いします。
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