山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

犬猫

井口奈己監督の「犬猫」という映画が、2004年の新人監督賞に決まった。
なんともおめでたいことである。

私は井口監督の友達でもないし、知り合いでもなく、会ったことすらない。
ただ、映画館で私は、彼女に会っている。彼女の映画を通して。

新人監督賞を女性がとるのは、日本映画監督協会始まって以来の快挙なのだ。しかも、多くの予算をかけた大作ではなく、テーマも20歳前後の普通の女子のささやかな毎日をさらっと描いた作品なのだ。
(ほんとにせつなくてよい作品だよ。少女幻想なんてかけらもないからね)

私は筋金入りのフェミニストでもなんでもないけど、やっぱり、映像の世界がどれほど男社会であるか、そこでは、どれほど「男の論理」(甘く言えば「男のロマン」)が作用しているかは、痛いほど、見にしみるほど知っている。そのなかで、女性が監督になり、映画を撮るということが、どんなに大変なことかも知っているのだ。

でも、世界は変わる、時間は流れる。
新人賞選考の様子が、監督協会の月報に書いてあったけど、やっぱり、監督するひとたちはバカじゃないよなあと思った。

話題づくりのために賞をとらせたり、お金もうけのために動くひとはたくさんいる。そういうひとを責める気はないし、それはそれでひとつのやり方だろうと思う。でも、やっぱり自分が信じていない作品を売ろうとするひとは嫌だし、すくなくとも私はできない。

昨年はかなりヒットした映像作品があったのだが、そういうものに引っ張られないで、ストレートに映画としてよかった、「犬猫」が新人賞に選ばれてほんとによかった。

これを機会に、「犬猫」がもっと多くのひとに見られるとよいと思う。

いつかかならず、よい風は吹く、そんなことを思った。