山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

仕掛けのある秘密のBAR

今日は久しぶりのおやすみ。
ゆっくりたっぷり眠って、一日、家におりました。
でもって、洗濯をたくさんしました。

洗濯については、ちょっとうるさい。前にも書いた通り、家事の番組を長年やってきたので、家事ノウハウをたくさん持っています。
例えば、ジーパンを洗う時には、液体洗剤。これは色落ちを防ぐんですね。
仕上げには、スタイリング剤をつかうと、ジーパンをはいたとき、スルリとはけて、足入れが気持ち良かったりします。

男性のTシャツなどは、ワイドハイターを入れて洗ってます。特に夏は除菌効果があるので、汗が気になる方には、おすすめ。白さも保てるし。

とすっかり主婦のようなことを書いてますが、昨夜行った、おしゃれバーのご報告をしなくっちゃ。

そこはですね、東京タワーの根元にあります。根元、という表現がぴったりな場所で、見上げないとオレンジ色の脚しか見えないの。
看板も装飾もまったくないので、知らないと絶対たどり着けない。が、まあ、看板のない店、もう、めずらしくないから、それだけでは誰も驚きませんよね。

普通のビルのまるで非常階段に通じるような、素っ気ないドアから入ります。
「あら、どこへいくのかな?」と思って進むと、品のいいリビングみたいな、柔らかい光の空間が広がります。といっても、そんなに広くない。

センターに木製のしっかりしたバーカウンターがあり、壁面には、イタリアモダンな大きめなソファが。色調は、黒とブラウンって感じで、洗練されてシックな大人の遊び場系。
壁には、さくらのはなびらを模したわずかな装飾があって、なかなあ居心地のよい店です。

けど。
これだけであったなら、都心を徘徊して生きてきたわたしとしましては、そんなにびっくりしないわけです。「感じのいい店だね」くらい。

ところが。
常連である連れが、なにやら店のひとにささやくと、あらら・・という事態が起こりました。
それはですね、ある壁面がばーっと上がって行きます。
カーテンが開くとそこにあったのは・・・・?
さあ、なにを想像します?

お部屋?しかもおフトンが敷いてある?それじゃあ、イヒヒおやじご用達の料亭みたいじゃありませんか。ちゃいます。
お風呂?
ありましたね、そういう店。バブル期に。おおこわ。ちゃいます。

そこにあったのは・・・ ・・・「外」だったんです。
ええ、ようするに、壁がぬけるとそこは路上。
いわゆる窓ではなく、壁面が全部落ちるようになっている。だから、そとがまるごと、風景になるんです。しかも、見えるのは、東京タワーの脚ときれいな緑。場所柄、歩くひとはほとんどいませんから、奇妙な感覚にとらわれます。店が路面よりちょうど舞台ほどあがっているため、「バー」のセットの上にいるような錯覚を覚えます。

さくらのころは、室内にいながらして、満開のさくらを身近に感じて飲むことができるそうです。

さらに、路上から見ると面白い、ということで、店をでて、道におりてみました。
少し離れたところからみると、深夜に浮き上がった舞台なんです。すごくかっこいい。
もう、ここを舞台にして映画撮りたくなります。ブルブル。

「屋台くずし」という映画的効果があるのですが、ようするに、それまで、居住空間としてみせていた場所をいきなり、セットであったことをばらす、という手法なんですが、まるで、屋台崩しのなかにいるみたい。

屋台くずしの典型は、映画「蒲田行進曲」(古いね)のラストシーン。
それまで、病室で松阪慶子が横たわり、それを囲むように平田満がいるんですが、なにかのきっかで、三方の壁が落ちる。すると、そこはスタジオの一角で、照明さんやら、美術さんやらのスタッフがいて、そこが映画的虚像の空間だったことがわかるしかけです。
(もっと古いと、寺山修司の映画。田舎の家の四畳半でご飯をたべていると、きっかけで、壁が倒れるんですが、まわりは新宿のまっただなかなんですね)

なんていうか、とても映像的な仕掛け。

と書いていて、突然、思い出しました。
わたしも「屋台くずし」やったことがある。
ダウンタウン(お笑いの)のふたりが、まだ、メジャーじゃなかったころ、彼らのドキュメンタリーを作りました。松本さんのファンだったんです。
で、当時の彼等のメインの仕事は大阪で、ロケもほとんど大阪でした。

そして、その番組のラストシーン。
大阪の小さな劇場を出て行く、ダウンタウンのふたり。
彼等が、劇場から外に出ようとすると、ドアのむこうは、一瞬、真っ白になります。
(業界用語で、白にフエイドアウト)
それで、白があけるとそこは、東京タワーの真下なんです。
(もちろん、編集でつくった)
つまり、いずれ彼等が東京を制覇するってことを映像的に表現したかったんだけど、
(実際、彼等はそうなった)、その時の手法でした。

そんなことを思い出しつつ、とても感激しました。もちろん、私は映像つくりを生業にしておりますから、このような仕掛けの店に弱いのは当然ですが、これって、普通の女子だって充分感激だと思います。
(お店の方によると、そういうワザに使用する方もいるそうです)

そんなわけで、感激のバー体験でした。
(このお店は、会員制なので、店名やアドレスが紹介できなくて残念です。ゆきたいひとは、会員になってそうなギョウカイジンに連れて行ってもらってくださいね。その後、どうなっても知らんけど)