山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

借金について

「借金王」なるVシネを偶然見てしまった。
バブルがはじけて、それぞれの事情をもったひとたちが、多額の借金に苦しみ、それから逃れるために、詐欺行為を働くという筋だった。まあ、それはともかく。

バブルもはじけて10年以上たち、こういうドラマは減ったけど、まだ、当時の清算に追われているひともいるだろう。作家の山本一力さんは、2億の借金があり、そのうち、8千万近くを小説を書くことで返したと、数日前の朝日新聞に載っていた。そっか、直木賞とっても、2億の借金はそうそう返せるものじゃないんだなあとしみじみ。

わたしの親しいひとも、バブルで借金を抱え、ここ10年くらいは、自分のやりたいことを捨てて、一心に返済に向けて仕事をしていた。そろそろ、返し終わるようだけど、返済がすんだとしても、取り戻せないものもあるだろうなあと思う。

ひとつには時間。10年という歳月を返済のための効率のよい仕事にあててしまったこと。これから、好きなことをやるというから、その世界で成功してほしいと思うけど、失った10年は痛いだろうな。

もうひとつは人間関係。友人からも借金していたから、友人をだいぶ失ったようだ。別に踏み倒したわけじゃないから、返済が追われば、友情も元に戻りそうなものだけど、そこらへんはそううまくいかないらしい。そんなことで失われる友情なら、最初からなくてもいいとも言えるけど、意外に友情はもろいよね。

私もかつて、無謀なことをしたすえ、借金をしたことがある。三人の友人からお金を借りて、新しい生活を打ち立てた。半年ほどで、全員にすべて返したけど、その経験があるから、お金に困っているひとには冷たくできない。今でも、その時お金を貸してくれたひとたちとは仲良しだし、彼らに困ることがあったら、できる限り助けたいと思う。

友人に借金を頼む前に、当然、親に借りに行ったのだけど、今は亡き父が、私のお金の用途を聞いて、「そんなことをする奴に貸すお金はない」と断った。なんて冷たい親だろうと思ったけど、まあ、私の事情も事情だったので、父の気持ちもわからなくはなかった。

その時、父は「友達にお金を借りると友情が壊れるぞ」と言った。「それでも、借りにいくなら、恋愛関係のある男からだけは借りるな」と続けた。なんでそんなことを言うのだろうと思ったけど、これもまた、わからなくもない。

恋愛関係、もっとはっきりいえば、性的間柄のひとからお金を借りると、

1)踏み倒しやすい、2)その結果、借金という行為が売春めく、ということだろうと思う。父としては、娘に売春めいた行為をしてほしくなかったのだと思う。

「恋愛関係でない三人の男性からお金を借りることになった」と報告すると、父は、彼等の連絡先一覧を書くようにと言った。娘が返せなかった場合、最後は代わってやろうと思っていたのだと思う。

あれれ。借金のことを書いていて、父親の思い出話になってしまった。テヘ。
ほんとはそんな話を書きたかったわけじゃなくて、もっと別の気持ちが書きたかったのに。

世界は世知辛い。約束はどんどん破られ、傷付くことも多い。そういうときは、すべてを公にした方がいいという人がいる。彼女はずっとそうしてきた、と言った。彼女の告発で、同僚が左遷されたこともあるという。

そうなのかな。法律はそういう時のためにあるんだもんね。でも、法律からこぼれるもの、その前のわずかな情け、想像力、親しみが、いつもわたしを迷わせる。ギリギリの誠意に賭けたいような気がする。甘いのかな。でも、もう、疲れてしまった。