山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

朝焼けのファミレス

睡眠時間がめちゃくちゃ。
一昨日は一睡もしないで、午後から外出。帰ってきて、18時くらいから猛烈に眠くなり、23時まで眠る。起きて、身の回りのことをする。おなかがすいたけど、料理をする気分じゃなく、コンビニもちょっといやで、どうしようかと思いながらなにもしないでいる。

そんなわけで、空腹に負けて、朝の4時すぎ、近所のファミレスへいく。ふらっと。

深夜と早朝の間の、週末のファミレスは面白い。まず、寝ているひとが数名いる。ひとりの青年など、シートに横になってモロに寝ている。よくも注意されないもんだと思ってみている。

他の人は、椅子に座ったまま、ダラリと寝ている。あとは、夜通し遊び(今はオールっていう?)、疲れきりながらもフィニッシュのおしゃべりを決めている女子のグループなどなど。

そんな客を眺めながら、結構ハードにご飯を食べる。考えたら、心労で(!)一日なにも食べていなかった。和風ハンバーグセットとサラダを注文。(ヤバイかなあ)

食べている途中、私の後ろの席で、大胆に寝ていた青年が注意されている。店長らしい中年の女性が、青年を起こしている。
「お客さん、朝ですよ。もう5時間も寝ています。なにか注文して下さいよ」

あらら、注文もせずに5時間も寝てしまったのか。テーブルを見ると確かに水とまだ封を切っていない紙製のおしぼりがそのままある。

寝ぼけている客と店長、このままケンカか?
と思ったら、店長、すごぶる優しい。「お客さん、寝てもいいから横にならないでね、ほら」なんて言っている。客「あれ、ここどこ?」とぼんやり声。「広尾ですよ、お店のなか」なんて母と息子みたいな優しい会話が続いている。

一旦、客を縦にした(横になってたからね)あと、店長は仕事に戻った。客の20代半ばくらいの青年は立ち上がった。お笑いのアンガールスのどっちかみたいな感じの青年。レジにいくのかとおもったら、そのまま消えた。(たぶん、トイレ)

で、戻ってきて別の席についた。そこへ、店長(このひとは方向で言えば、室井滋さん系)が新しい水とおしぼりを持ってやってきた。
「なんか頼みますね」なんていってアンガールズはメニューを見ている。
室井さん「いいのよ、無理しなくて。もう電車動いてるから帰ったら」だってさ。
そんなふたりのやりとりをみていて、ここは本当に日本なのか、東京なのか、ついでに言うと広尾なのか、と思った。

なにも頼まずに5時間も眠っていた青年。それだけ眠るにはなにか理由があったかもしれない。(タクシー代がないなど、他愛のない場合がオチだと思うけど)。でも、あったかも。
土曜の夜に彼女にふられた、とか、仕事でミスして立ち直れない、部屋を追い出されて帰る場所がない・・などなど。想像はふくらむ。

そんな青年と、24時間営業の深夜帯の店長(もしくは責任者)。彼女は40代の後半といったところ。彼女の人生だってそんなにうまくいっているとは限らない。そんなふたりの人生が、朝焼けのファミレスでちょっと触れあう。恋愛とかそういうときめくものではなく、ヒトとヒトの優しさというより情けが通いあう瞬間。

アンガールズも優しくされて、なんだか機嫌がいい。
「なに食べよっかな」なんてウキウキメニューを見ている。

ブルックリンあたりの食堂で起こりそうな話でしょ。

黒人のおばちゃん店長とアジア系の青年の朝焼け。ポールオースターの小説みたい。
黒人のおばちゃんはかつて息子を亡くしたことがある。アジア系の青年はなにか夢があってニューヨークに来たけど、全然うまくいかない。・・ありきたり?

あるいは、単館系の映画館でかかる映画みたい。やっぱりニューヨークが舞台?
いや、ミラノでもロンドンでもパリでもありそう。ごちゃとしたダウンタウンのカフェで。
でも、ここは広尾でした。

かってに想像を膨らませながら、ファミレスをあとにした。ふたりはまだ、注文をめづっておしゃべりを続けていた。
なんだかな。悪くない気分で帰ってきた。

朝が来ていた。