山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

職人になるか、芸術家になるか。

たまには、写真なし、とゆうことで。

昨晩は、橋本忍著「複眼の映像、私と黒澤明」を読んでました。天下の大監督、黒澤明がどのようにして、脚本を作っていったかというお話です。脚本家の橋本忍さんは、1950年に「羅生門」という映画で黒沢さんと初めて組み、それが、日本人としては、はじめて、ヴェネチア映画祭でグランプリをとるという快挙を成し遂げたひとです。

で、この橋本忍と黒澤明が、どうやって、名作といわれる映画の脚本を作っていったかを詳細に書いています。それが、なんとも、面白い。現場に立ち会う臨場感があるし、シナリオ作りの勉強にもなってしまうという、すごい内容です。

なかで、印象的なこと、いくつか。

脚本を書くときに一番、大切なのはテーマを決めるってこと。テーマとは、せいぜい2行くらいでいえる内容でないといけないってことです。「地球に置き去りにされた宇宙人が、もとの星に帰るまで」といったら「ET」だし、あと75日しか生きられない男が、死ぬ前になにをするか、というのは、「生きる」のテーマなわけです。

テーマを決めるなんて、一見当たり前みたいだけど、例えば、小説ならテーマを決めないで書き始めてもOKだったりするんですよね。書いているうちにわかったりとか。けれども、映画ってそうはいかなくて、すべてのシーンがテーマに向かっていないとだめってことなんですよねえ。

もうひとつ、打たれたのは、結局、創作を生業にするものは、「職人」か「芸術家」のどっちかをえらばないといけないのだなあという、創作者の宿命のようなお話。黒沢さんと橋本さんは、7本の映画を共同脚本するんだけど、以後、離ればなれになっていくわけです。袖を分かった背景に、「職人の道OR芸術家の道」があるわけですねえ。

いやあ、読み物としても面白く、創作業をひっそり営む者としても、根性を問われるようで、たいへんたいへん、身にしみました。昨晩、午前1時頃読んでたんですけど、一応、書き終わった某・映画の脚本が「だめだ、あのままじゃ!」と思えてきて、布団を抜け出し、朝まで書き直してしまったよ。

その後、昼間寝てたんだけど、夢のなかでも、黒沢・橋本の死闘が蘇ってしまって、熟睡できなかった。それで、また、延々、脚本、直した。

なんか、「おまえはそれでも、物書きか!」と怒鳴られちゃったみたいな気分で、気持ちがただされた。

感動的な本だった。