山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

プラダを着た悪魔、鑑賞。

渋谷で「プラダを着た悪魔」をやっと見る。
ファッション業界の裏側的ストーリーなのかと思っていたら、とてもオーソドックスな、女の子の仕事モノだった。宣伝では、ブランドモノの服がたっぷりでてくることやファッショ誌のあれこれが見られるってことが売りになっていたけど、どっこい、それはあくまで「脇」だ。わかりやすい、人間ドラマにちゃんと作ってある。やはりヒットするものって結局「ヒト」を描いているってことだよなあ。

そして、そのテーマは先進国(って言っていいのかな)であれば、ほぼ世界共通になりつつある、女にとっての仕事ってなにさ?的なストーリーだ。もちろんそれに恋愛もからむけど。テイストはブリジット・ジョーンズの日記に近い。

アン・ハサウエイ演じるアンディがジャーナリスト志望のださい女子からファッション誌の編集者らしく変身していくのは、見ている分には楽しいけど、なかなかリアリティはないよね。まず、あれだけの高価な服を買えないでしょ。映画では、社内にある撮影用衣装から拝借しているふうに描いていたけど、そううまくはいくまい。それと、たった数ヶ月で急にセンス良くなるほど、ファッションの道も甘くないよね。センスは一日にしてならず。おしゃれなひとって、長い長い間、たくさん服を買って、失敗した経験と、つぎ込んだお金の分、センスがよくなるわけで、ブランドものを着ればそれでOKとはなるまい。

メリルストリープ演じるカリスマ編集長はリアリティあったし、なかなかかっこよかった。離婚して落ち込んでいるとき、アシスタントのアンディが「なにか私にできることはありませんか」と励まそうとするけど、編集長の答えはひとつ。「自分の仕事をしなさい」ううむ。かっこいい。

そうなの、結局のところ、仕事は仕事なので、仕事で返すしかないのよね。そういうディテールがちゃんと描かれていて良かったな~。しみじみ、女子の仕事もここまで来たか・・って感じがした。自分が20代のころは、こういう映画はまだまだ出現しなかったんだよね。観客がようやく成熟したのか?

あと印象に残ったシーンは、アンディが勤め始めたばかりの頃、友達と集まって就職祝いをするところ。その時の乾杯のセリフが「家賃のための仕事が決まって良かった」というもの。本当にやりたい仕事はあるけど、それじゃ食べられないから、今は別のことをしてる・・って状態は、20代にはよくあること。女優になるまで、クラブで働くとか、コンビニで働きながら、脚本家目指すとか・・いろいろあるけど、これのきついところは、いくつになっても、「家賃のための仕事」しかできない場合があることと、実際、そっちのがほとんどだってこと。笑って乾杯していられるのは、20代までだよな。

それにしても、メリルストリープの自分の仕事を信じる姿はかっこよかったなあ。たかがスカート一枚と思うなよ。ファッションなんてバカみたいと思うなよ。って態度にしびれた。プロってああいうもんだよなあ。一見、ばかばかしいことに必死になる・・そういうもんです。

家事番組を作るとき、とても細かいことまで確認したり、会議したりする。かつてそのことを専業主婦の友人に話したら、ハナで笑われた。「私たち主婦はそんなにくだらないことに力注げないわ。本物の主婦じゃないからそんなもん、作れるんじゃないの?」けれども、実はその主婦が何気なく買っている洗剤などは、陰でさんざん研究された結果の製品なんだよなあ。そんなことを思い出した。プロをあなどるなかれ。果たして、自分はどこまでプロといえる仕事をしているのか・・と思って、反省反省。

というわけで、なかなか見応えのある映画でした。さすが、「SATC」チームが作っただけある。都会の働く女性の気持ちをよお~くわかってらっしゃるなあ。自分もああいうもん、作りたいよ~。