山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

野良犬のゆくえ

次に書く小説が北海道の牧場にからんでいるので、参考資料でいろいろ読んでる。現在、読んでいるのが、2000年頃にベストセラーになった小説である。北海道の牧場での出来事がきっかけで、殺人事件が起きたり、悲恋があったり、出世物語があったり・・の長編小説である。読んでいる実感は、「韓流ドラマ」っぽいなあってことかな。テレビドラマになったので、ドラマは見ていたんだけど、原作を読んで、かなり違和感があった。

舞台は、1990年代後半、97年頃のお話である。つい10年前だ。最初にひっかかったのは、野良犬について。刑事が聞き込みをしたり、主要なシーンで、野良犬がけんかしていたり、うなり声をあげた・・なんて描写がある。その場所というのが、品川界隈だったりする。え・・?10年前の品川付近に野良犬がいただろうか。うちの犬は95年生まれだけど、自分は品川からそう遠くないところにすんでいるけど、野良犬なんて一頭も見たことない。都内に野良犬なんていないはずだ。飼い犬はたくさんいるから、それが逃げ出したり、迷子になる・・というのは考えられる。けれども、野良犬になるまで、都内で生き延びることはほとんど不可能である。すぐに捕まえられてしまうからだ。そして、それらの犬たちは、基本的にひとになついているので、うなったりするのはそうそういない。唸るような奴はすぐに通報されて、保健所送りになる。犬については、過敏なので、たいへん気になった。

野良犬が都内で唸っていたのは、たぶん、40年前くらいまでじゃないだろうか。そう思って読むと、このお話自体が、40年くらい前のひとたちの話のように思えてくる。出てくるひとたちが、いちいち昔のひとっぽい。いろんなことが、まだ、戦後と呼ばれた時代の日本の出来事だったら、納得がいく。けど、バブル崩壊のことがしつこく出てくるから、そうではないんだよなあ。キャラクターもみんな、「昔の日本人」っぽいし。特に女性については、「こんな女が現代にいるのか?」と思ってしまった。

いやはや。(しかし、大ベストセラーだぞ)。
もちろん、牧場についての記述はたいへん参考になったし、ものすごいお話なので、どんどん読めて楽しくはある。けど、なんか、考え込んでしまう。なんだかな。今時、野良犬なんていませんよ・・って誰も指摘しなかったのかなあ。

いや、そういう些末なことを求めてはいけない。もっと壮大なドラマなんだよね、きっと。