山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

映画「お茶漬けの味」

今日も一日、家にいられて、真にハッピーでリラックスできた。

DVDで小津安二郎監督の「お茶漬けの味」を見た。ある夫婦の物語だ。夫婦ってなに?、夫婦の良さってなに?がテーマだろうな。その心は、お茶漬けの味ってわけだ。

この作品が発表されたのは、1952年で今から50年以上前だ。その頃は、見合いで結婚するのが一般的だったようだ。親や知り合いから勧められたひとと、結婚する。戸惑いや迷いがあっても、大人に(親とか会社の上司とか…)強く勧められたら、断ることは難しかったんだろうなあ。それに、ある程度の年齢になったら、結婚するのが当たり前だっただろうし、女性は、結婚以外の生き方がそれほどなかったんだろうなあ。

で、この映画の主役の夫婦は、結婚して何年かたっているんだけど、(具体的な年数は映画のなかでは説明されないが、20代の後半か30代前半ってところ?)、あんまりうまくいってない。妻は、夫に嘘をついて、女友達と温泉行ったりして、うさを晴らしている。夫は、特にそれをとがめることもなく、ちょっと鈍感な男として描かれている。この、「なんとなくしっくりしない夫婦」がお茶漬けの味の境地にたどりつくまでの物語だ。お茶漬けの味というのは、深夜になにも食べるものがなくても、お茶漬けを囲んで、幸せだな…と思えるような関係のようだ。着飾った関係より、リラックスした普段着の関係みたいなものかな。

とはいえ、長い時間を過ごしたあとにそれがやってくるのではなく、ちょっとしたきっかけで、妻は夫の良さを知り、夫も妻を愛しいと思うようになる。

たぶん、夫婦はこういう小さな出来事を繰り返しながら、絆を深めていくものだったのだろうな…と思う。見合い結婚だから、もともと、強い情熱で結ばれたわけではないので、最初は距離があるはずだ。それをお互い歩み寄りながら、アツイ恋ではないけど、なんらかの関係を形づくっていく。昔はそうして、「いい夫婦」になる場合も多かったんだろうなあ。

しかし、今は、こういう形の結婚は希ではないだろうか。見合い結婚そのものが減っただろうし。結婚前に恋愛し、お互いをよく知ってから結ばれる場合が多いだろうから、少しずつ歩み寄るっていうのは少ないだろうなあ。けど、昨今の婚活などでは、案外、このように、とりあえず、結婚してみる…というやり方も増えているのかもしれない。

まあ、どういうスタートにしろ、ふたりの人間が一緒に暮らして、なんとなくうまくやっていく…というのは、悪いもんじゃないもんな。恋愛が男女の結びつきのなかで、一番大事!という時代がやや過ぎたこの頃、昔みたいなお見合いで結婚するのもアリなんだろうと思えてきた。見合いだとお互いの家庭環境などが似ている場合が多いだろうから、うまくいきやすいのかもしれない。そして、徐々にお茶漬けの味に近づく…という。

そんなことを、おやすみでぼんやりできる時間があるので、考えました。しかし、自分は、若いころは、「お茶漬けの味」みたいな関係性を憎んだものでした…笑。もっと強烈な関係だけがよろしいと思いこんで下りました。若かったのだ…そして、そういう時代の流れだったのだ。

ケニアで、エイズ予防のために、「愛」のなんたるかを説く女性に会った。望まぬ妊娠や病気をもらわないためには、愛の概念を持つことが必要なんだ。…もしかして、愛(=ロマンチックラブイデオロギー)ってそういう背景から生まれたのかな…なんて思ったりもした。非常に興味深かった。ので、このテーマはこれからじっくり、やるつもり。っていうか、仕事にしようと思っております。来年、取材にもう一度行きたいと思う。

そんなわけで、愛の話。