山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

映画「カイジ」

今日は、「名曲探偵 アマデウス」の衣装合わせと本読みにでかけました。とっても楽しい俳優さんにゲストに来てもらって、本読みも面白かった-。以前、短いドラマで、ちょっとだけご出演いただいたことがあったんで、いつかちゃんと仕事したいなーと思っていたので、願いが叶いました。収録は来週、とても楽しみです。

その後、スタッフの女子二名とランチをして、最近の婚活事情などを聞きまして、その後、渋谷へ行って、念願の映画「カイジ」(佐藤東弥監督)を見て来ました。なんで、念願かっていうと、友人が監督をしているということもありますけど、「カイジ」、普通の映画より長いため、タイムテーブルが難しくて、なかなか見に行くチャンスがなかったんです。しかし、今日は、早い午後に身体が空いたので、うほほ!と見に出かけました。

いや~面白かったです。とにかく、濃い映画だなと。主人公始め、出演者たちがみんな、あつく生きています。「負け犬」からの人生逆転ゲームのお話なんだけど、どーして、どーして、主人公のカイジ(藤原竜也くん)あついです。あと、けっこう、ドキドキのセリフが多かった。つまり、「おまえは奴隷だ」とか「貧乏人は一生浮かび上がれない」…みたいな、テレビではなかなか口にすることのできないような、熾烈なセリフがぽんぽん飛び交い、心地よかったです。

いえいえ、私が「奴隷!」とか「貧乏人め!」とか思っているというのではありませんよ。なんていうか、テレビの世界だと、そういう言葉はあまり使えない空気のなかで暮らしているため、「はっきり言う」感じが面白かったんです。へんに、優しい言葉に置き換えてない「いっちゃってる」感が良かった。逆にこういう方が気持ちいいよね。なんだっけ、毒まむし三太夫さんが、年老いた女性に向かって「ババア!」って叫ぶ心地よさでしょうか。…ちがうか。

「愛は地球を救う」の日本テレビの映画なのに、大丈夫なの?と途中心配になるくらい、負け犬たち、人生の落伍者たちを、罵倒しています。香川さんが支配層サイドの奇妙な人物を演じられていてこれがまたヨイ。あと、天海祐希さんもかったこよかったです。あれよあれよの時間でした。あと、松尾スズキさんが相変わらずすてきでした。

各所に今を描いているような批評的空間があって、それが面白かった。カイジは勝負に負けて、地下での強制労働へ行くのですが、ここの構造が、ある種の今の社会を投影していた。

薄給で単純できつい労働をする日々。カイジは、そういう暮らしから抜けだすために貯金しようと考えるんだけど、「自分へのご褒美をどうぞ」と勧められると、高いビールやつまみにお金を使ってしまいます。なんか、コレ、資本主義の本質を描いているなーと思いました。

つまり、働いて、稼いでも稼いでも、「買わないといけない」と思わせる商品を買わされ続ける世界。その循環に入ってしまうと、抜け出すことができないということ。そこで、ルールに従い、ほんの少しの甘みのために、ほとんどの給料を使うような暮らしを続けていると、永遠にそこから逃げられない。非常に象徴的だった。

この循環のなかにいつづけること…たぶん、それを負け犬人生と呼ぶのでしょう。しかし、このドラマの主人公は、たった一度だけ、自分でルールを変えるんだな。この自分で「ルールを変える」ってところが、結局は「勝ち」につながるんだなーと思った。誰かの作ったルールのなかで、勝負していても負け続けるだけだからね。

ルールを変えて、勝ったところで、じゃあ、そこになにがあるか?と言われたら、同じ世界が広がっているだけ…かもしれないけど、私は、カイジが、自分でルールを変えるところが一番好きだった。
そうこなくては…と思いました。

…なんか、うれしかった。

おっと、「名曲探偵アマデウス」、最近作ったのをお知らせするのを怠っておりました。

#42 「ダッタン人の踊り」 ゲスト:蟹江一平  脚本・演出
#46 「ショパン・エチュード」 ゲスト:細田よしひこ  脚本

お時間あったら、ご覧くださいませ。