山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

初号試写。



今日は、午後から自分の映画「すべては海になる」の初号試写でした。初号ってなに?って思うでしょ。自分もよくわからなかった。このほか、0号試写というのもあるようだ。ようするにできあがって最初にスタッフ・出演者で見る試写のことを初号というようです。

エヴァの初号機みたいなもんです……ちがうか…。

自分の映画の場合は、公開時期が迫っているので、マスコミ試写も始まっているのですが、初見で見る人と、スタッフや出演者に見てもらうのはまた、全然違う気分で…。なにしろ、現場を知られているわけですから。

なので、正直、ビクビクでした。…怒られたらどうしよう…と思うわけですね。最近、気づきましたけど、自分はしょっちゅう「怒られるんじゃないか」と脅えることが多いのだなーと。(こんなに長く生きて、今頃気づくな…!ですが)。そういえば、はじめて書いた小説が、とある文学賞をもらったとき、最初の連絡で、出版社のひとが怒って電話してきたんじゃないか…と即座に身構えました。「こんなつまらない小説、送って来ないでください」そう言われるんじゃないかと、ビクビクしました。

しかし、冷静に考えてみると、そんな電話をわざわざしてくるはずがなく、無事、賞をいただき、とりあえず小説家としての道を歩み出したわけです(細々と…)。自分の基本姿勢に、「怒られるんじゃないか」という身構えがあるということがわかりました。とにかく、怒られるのに非常に弱い。

(……これって、育ちのせいかなあ……)。

怒られたトタン、しゅ~っと音が出て、しぼんでしまうところがあります。なので、仕事をする相手も、怖いひと、強いひと、横暴な人、声の大きい人がものすご~く苦手です。しかし、この業界、声の大きい、強引なひと、多いんですよー。よくもそんな世界で今日までやってきたと思いますよ。

けどね。ずっと思って来たことは、気の弱いひとが映画の監督になってはいけないのか?だったら、気の弱いひとの気持ちをわかる映画はできないんじゃないかってことでした。テレビもね、最初のころ、女性のディレクターは少なかったし、ここでも大きな山を乗り越えないといけなかったし、ドラマを撮らせてもらうようになってからも、この気の弱さでどうやっていくか…ってことについては、いろいろ策を練りましたもの。

結局、怖そうな人とは仕事しない…ってことなんですけどね。でも、たまに読み間違って、ものすごく強引なひとと仕事しないといけなくなったこともあり、そういうときは、精神が壊れたりします。けど、自分は、一方で、過剰にまじめなので、一度引き受けた仕事は、たとえ発狂しても、ちゃんとやったりするような変なところがあるので、途中で逃げたことはなかったのでした。…とほほ。

自分は絶対、誘拐されたら、誘拐犯を好きになるタイプなんです。わかりますでしょうか。

どんな過酷な状況でも、自分を殺して、ひとに合わせて生き延びようとするところがある。案外、この性格のおかげで、どんな仕事もこなすことができるんですよーって、うらやましくないか……笑。

話が長くなりました。そんな気の弱い自分ですから、みんなと一緒に見る…というはいやだなーと思って、挨拶したら隠れて、二時間過ぎたらまた、出てくることにしようと思っていたのですが、プロデューサーのひとから、「これも仕事なんだから、ちゃんと、みんなと一緒に見ないとダメ!」と、猫のように首もとをつかまえられ、始まる直前に試写室に入りました。

で、まあ、久しぶりに見ちゃって…自分で見て、感動しちゃって……笑。

でも、エンドロール直前で、逃げるように先に出ました。終わった瞬間の空気が怖かったからです。バカです、超気が弱いです。だって、しらっとしてたらイヤだし、受けてたら、「ほんとに?」と疑うし、気が気じゃない。

で、いったんトイレに避難してから、会場に戻りました。すると、わらわらと見てくださった方々が出てきて、怖いったらない。いえ、けっこう、みんな褒めてくれて、あーよかったーと思ったんですけど、そして、まさか「け、つまんねーよ」などと正面切って言う人もいないんでしょうけど、マイナスの想像力が過剰に発達しているので、怖くて怖くて。すみません、挙動不審で。

でも、数名のちゃんとお話できた方々からは、共感してもらえて、すっごくうれしかった。その場で土下座したくなりました。

ということで、本日、初号に来てくださった方々、出演者の方々、スタッフの方々、本当にありがとうございました。みなさまのおかげで、自分のような、気の弱い、ちっぽけな者も一本映画を撮ることができました。本当にありがたいです。心の底から深く感謝しています。そういうことをもっとちゃんと伝えないといけないのに、こそこそ、へらへらしてすみません。

みなさま、本当にありがとうございました。

自分で見てて、思ったんですけど、この映画は、気の弱い、ダメな女性とダメな男子が、なんとか、息も絶え絶え、お互いに手を差し伸べるようなお話でした。けど、決して、その手は………。

続きは、劇場でよろしくお願いいたします。

あ、もうひとこと。

実は俳優部さんの一名も、「試写でみんなと一緒に見るのは緊張するからno」というひとがいて、
「うわーわかる」と共感しました。その俳優さん、とってもナイーブなので、わかるわかると思いました。

ナイーブ自慢でした。