山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

舞台「11月のスズメバチ」

今日も朝から某テレビ番組の編集。今回はとても順調に進み、夕方には終わった。そこで、中野まででかけ、舞台「11月のスズメバチ」を見に行って来た。

なぜ、出かけたかというと、俳優の鈴木眞くんが出演していたからであった。鈴木眞くんは、実は、自分の映画「すべては海になる」にも出てくれているのだ。世渡り上手のお調子者の編集者を演じている。村上淳さん演じる、人気作家の担当編集者という役所。お得意の飄々とした演技で、そのシーンを和ませている。なんか、このひとの、軽い感じの芝居が好きなのだ。

一方、今日の舞台では、かつての野球少年を演じていた。15年前、甲子園を目指して練習に励んでいた野球部のメンバーが、ひさしぶりに集まるところから物語りは始まる。野球部のお話だが、とにかく、野球について記述が細かい。自分など、野球用語をあまり知らないので、ちょっと外国語のようであった。それでも登場人物と、作・演出家がどれほど野球を愛しているかは充分にわかった。

野球少年たちの再会…懐かしもの…かな…と思っていると、15年前思わぬ事件があったことが知らされ、物語はその事件の謎解きを始めるのである。しかもその事件というのが、想像していた友情がらみではなく、もっと不可解な事件で…おう、どうまとめるのであろう…と身を乗り出してしまった。

鈴木くんの役は、野球部のなかでも、「いい方」の部員だ。レギュラーだし、ピッチャー?キャッチャー?…のどっちか…。あ…投げるひとじゃないほうだな。自分の想像していた、「おもしろキャラ」のひとではなく、2.5枚目くらいの感じだった。

まだ、公演中みたいなので、みなさんも鈴木眞を応援に行ってみてくださいな。

そんなわけで、熱い芝居だった。そして、小劇場に行くといつも感じることを今日も感じた。それは、ずっとやりたいことを貫くひとたちへの敬意である。反省もこめて…。自分は大学の頃、自主映画やっていたけど、貫かず、テレビの仕事を始めてしまったし、やっと小説家になったのに、小説に専念せず、いろんな仕事をやってしまっている。ほんとにもう…!!と思う。

そういうやり方で人生ほとんど生きちゃったよ…。あー。お金と仕事に不自由はしなかったが、なにかを失ったのではないか…という気持ちになるのだ。…なにを失ったと思うか。それが漠然とわかるような気がしてきた。それは、無為の時間、あるいは、とことんつきつめて作品をつくる時間だったかもしれない。ああ、無情!

けど、まだ、人生終わったわけじゃないしね。

それから、今更ですが、「すべては海になる」の文庫、11月6日(金)、昨日発売でした。新聞に広告を見て知った次第。なわけで、ぜひ、買って下さいねー。解説は上野千鶴子先生でごわす。