山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

映画「フェイク」

一昨日の真夜中に、DVDで、映画「フェイク」を見ました。

アル・パチーノとジョニー・デップという、「濃い」男ふたりのお話。この映画、知り合いの若手俳優君が、絶賛していたので、借りてみました。とても若い彼が絶賛なので、もっとわかりやすい、バイオレンスたっぷりのギャング映画を想像していたけど、失礼しました。かなりリアルで、よくできた脚本の映画だった。

おお、さすが、名優、見る目あるんだ…と今更、ショックを受けた次第。…個人的な思いはともかく、良くできていたなあ。実話に基づいているからこそ、リアルなんだろうか。いや、そういうことではないだろうな。実話に基づいていても、派手に演出することだって可能だろうから。

ざっくり、ストーリーを書くと、主人公は2名。ジョニー・デップ分するFBIの捜査官と、アル・パチーノ分するニューヨークのやくざ。ジョニーがやくざを装って潜入捜査するところから物語りが始まる。やくざであるレフティ(=アル・パチーノ)は、荒っぽいところはあるけど、兄貴肌の根はけっこういい奴。ふたりはどんどん打ち解けていく。

まるで、バディムービーみたいな感じになっていく。やんちゃなふたりがいろいろしでかす…みたいな。そして、このふたりの会話がいつも秀逸で。脚本家だったら、まねしたくなるような、うなるようなシーンが続出する。

レフティはやくざ…っていうか、マフィアなんだけど、企業の中間管理職みたいな感じ。ノルマをこなさないといけなし、上司の命令は絶対だし、その割りに出世しないし…でも、他に行くところもないし……って感じ。中年サラリーマンは、シンパシー感じるんじゃないだろうか。やっていることは、やくざだけど、ちっとも勇ましくないし、かわいそうでさえある。

それをまた、アル・パチーノがすこぶるいい演技で見せてくれる。わかりやすい涙じゃないけど、泣けてくる。一方の、ジョニー・デップがまた、いい。冷静なFBIの捜査官としての顔、長期出張続きで、妻から離婚を持ち出される夫の顔、レフティに惹かれ、同情する男の顔を、言葉すくなに、演じている。それが絶妙。すごい演技のぶつかりあい。…というか、心地よいリズム。

それでもって、ストーリーもとても面白い。よくできているなあ。ギャング映画なのに、暴力を淡々と描くところがまた、いい。あ、ギャング映画じゃないのかもしれない。人間ドラマというジャンルだろうか。中間管理職やくざのレフティも悲しいけど、彼をだますFBIも悲しいんだ。いったい、なんのために?…という気分になった。

見たことのない新鮮なドラマ。調べると、この監督、「ハリー・ポッター」から「トラフィック」まで撮っている。腕のたつ職人なんだなあとまた、感動。

…学ぶところの多い作品だった。