昨日まで、ハンブルグ、パリと行ってきまして、いろいろ感じたこと、考えたことがありました。いっぱいありすぎて、なにから書こうか、迷うよー。
今、考えただけで、書きたいテーマは…
1)飛行機のなかで、見た映画「アリス・イン・ワンダーランド」
2)飛行機のなかで、見た映画「インビクタス」
3)小さな映画祭に行く意味
4)今日、観に行った、本谷有希子の舞台「甘え」
5)フランスにおける、映像制作への国レベルでの支援とその結果
6)パリの日本人たち。
というわけで、どれからいこう。
映画、舞台の各感想はおいおい書くとして、3番目の小さな映画祭に行く意味について、書こう。
ハンブルグ日本映画祭に行ってみようと決めたとき、映画祭ビジネスのさる関係者から、「行っても意味ないですよ」というようなことを言われました。やや嘲笑的な感じで。
まあ、そのひとにいわせれば、カンヌ、ベネチア、ベルリンなどの三大映画祭や、コンペのある映画祭以外に、わざわざでかけていく意味はない…とのことでした。それによって、評価があがったり、世界配給につながったり、ようするに「売り上げ」と「評価」に反映されないのなら、「行く意味なし」という判断だと思います。
まあ、経済効果から考えれば、そうかもしれないと思うので、そのひとの言う意味もわからなくもないけど、やっぱり、ちがうと思いました。もちろん、そのひとは、映画を作るひとではなく、それを売るのが目的だから、立場が違うのでしかたないとは思うけれどもね。
でもさ、作ることの喜びの基本を忘れてるよね。
自分は、まず、ハンブルグ、しみじみ行ってよかったなーと思います。エアチケット代(=自腹)などはるかにしのぐものがありました。まず、ドイツという未知の国で上映され、そのときの観客の様子を見ることができたこと。上映後の質疑応答で、いろんな質問が出て、それに対して答えているうちに、考えたこと、発見したこと。さらに、夜には、映画祭の関係者や、地元ハンブルグ大学で日本文化を学ぶ学生たち(みんな、日本語が上手)と、いろんな話ができたこと。
こういう経験って、なにものにも代え難いものだと思う。自分の映画を気に入ってくれたひとにも会えたし、前の日記に書いたように、エヴァンゲリオンの影響が見られる…なんて、あらたな視点で論じてくれるひともいたし、だいたい、映画好き、文学好きが集まって、わーわーしゃべるのって、基本的に楽しいし。
そこから生まれる関係もあるし。
3月にドービルの映画祭に行ったときに知りあったひととの関係で、今、フランスで小説を出版する計画を検討してもらっている。それも、映画祭に行ったからだ。別にそのとき、売り込もうとだけ思っていたわけではなく、自分の書いたもの、書きたいもの、興味あることについて、話していたら、それが広がっていった感じ。
ドービルで通訳をしてくれた女子に、原作本をプレゼントした。そのときは、なんとなく、手渡しただけ。そしたら、彼女は、小説の解説(上野千鶴子さんが書いてくれたもの)を、勝手に翻訳してくれていた。彼女いわく、上野さんの解説を読むと、この小説の意味がよりわかるし、日本の現状をよく知らないフランス人への興味のきっかけになるから…と。
それで、フランスの出版関係の方に企画書を出すときには、すでに解説は翻訳されていたので、非常にスムーズだった。彼女(通訳の女子)は、その他、私の小説を何冊も日本から取り寄せ、読んでくれていた。そのおかげで、フランスの出版関係のひとと話すときも、自分がどういう作家で、どんなものが得意なのかをさりげなく、フランス語でアピールしてくれた。
こういうことって、幸せな偶然の連鎖っていうか、とてもありがたい。もちろん、通訳として、仕事として、雇っているわけだけど、彼女は、それ以上の準備を独自の判断でして、進めてくれていたわけだ。これも、実際行って、出会ったからだと思う。
自分はフリーランスになって、20年近い。なので、常にこういうひととのつながりで仕事が続いていく部分がある。(もちろん、賞をもらったり、作品によって、仕事が依頼されることもあるけど)。
だから、映画祭に行くのは、たとえ、それが小さいサイズであっても、意味ない…なんてこと、ちっともない。これでフランスで本が出なくても、ドイツで配給されなくても、それでも、出かけて行って、出会ったひとびととのつながりや、話して楽しかったことや、考え方に触れて、ひらめいたことは、消えることはない。
それと、私の本は、一冊、ハンブルグの、文学好きのホテルの図書館に収まった。世界中のいろんな小説と並んでいる。そのことだけでも、なんか、すごい嬉しい。
だから、意味ない…なんてことないんだよ。
注:ハンブルグで映画を見てくださった方へ。
本当は35ミリフィルムで上映予定でしたが、フィルムが届かず、いたしかたなく、ブルレイにコピーしての上映でした。なので、おそろしく、画質が悪く、暗部がつぶれていました。作った側からしたら、とても悲しいことでした。そして、観客の方々にもベストの状態でお見せできなかったことを、申し訳なく思っております。