山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

90歳のひとりランチ。

今日は、母を連れて、父の墓参りに行き、帰りに、繁華街にあるデパートのレストランで、お昼ご飯を食べた。

偶然となりに座ったのが、上品な感じのおばあさんだった。おばあさんは、ひとりでやってきて、マンゴープリンと珈琲を頼み、おいしそうに食べていた。

が。

食べ終わると、おもむろに母に話しかけてきた。同じ老人同士ということで、親しみやすかったのだろう。おばあさんは、今年で90歳だと言う。デパートのある街に90年間暮らし、夫は入院中で、現在一人暮らしとのこと。時々こうして、デパートのレストランに遊びに出てくるのだという。

90歳とは思えないかくしゃくとした姿で、黒のジャケットに黒のイヤリングを合わせている。うっすら白粉もはたき、口紅もさしている。とてもおしゃれなおばあさんだった。おばあさんは、こんな風に言う。

「友達はみんな、死んじゃったのよ~」

そうだろうなあ、90歳になって、ひとりで元気で街を歩き回ることのできるひとなんて、そんなにたくさんいないだろう。友達はみんな、死んだ…。どういう気分なんだろうなあ。

上野千鶴子さんは著書「おひとりさまの老後」のなかで、結婚していても、子供がいても、最後は、ひとり…と書いている。女のほうが平均的に長寿だから、ひとりで生き残る確率は高い。

わたしもひとりで生き残るのかな。そんなとき、なにを支えにして生きていくのかな。時にはひとと話したくなって、ふらりと街へ出て行ったりするのかな。でも、考えてみたら、今とそんなに変わらない?いやいや、友達は、いっぱい生きてるし。

ちょっとせつない気持ちになりましたが、そのあと、約束があったので、おばあさんをひとり残して、レストランを出ました。「話せてすごく楽しかった」何度も繰り返す姿に、さらにじんときたのでした。