山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

映画「セックス&ザシティ2」

今日は、勝どきへ、「バルトーク」の演奏会に行きました。

指揮は、新田ユリさん。「名曲探偵アマデウス」でお世話になっている指揮者さんです。知り合いの方が指揮をしているコンサートは初めてだった。バルトーク、難解だと聞いていたけど、心地良かった。そして、新田さん、かっこよかったー。指揮者、かっこいい。

その後、六本木で、映画「sex and the city2」を見ました。何度かトライしたけど、いつも満席でなかなか見られなかった。今日も、予定していた回は満席だったので、2時間近く待って、やっと見ました。

見ている間、いろんなことを考えてしまった。なかなか冷静には見られなかった。

けど、ひとつの結論として、この映画は、やっぱり、フェミニズムについての映画なんだよね。あるいは、セクシャリティについて。恋愛とおしゃれにしか興味のない女4人のどたばたモノと誤解されがちだけど、底に流れているのは、テレビ時代から一貫して、「女性とはなにか、性とはなにか?」って根源的な問い。

まず、のっけから、「やられたー!」と思う。だって、ゲイの結婚式から始まるんですよ。キャリーの親友だったスタンフォードが、シャーロットの親友だったゲイ(名前、忘れちゃった)と結婚することに。ゲイらしい、派手で華やかな結婚式。でも、その時のキャリーのセリフがなかなか。

「伝統的な行事には、伝統に抗ってきた者たちにさえ、神妙にさせるなにかがある。さすが」みたいなことを言っていた。ゲイとキャリーのような女性たちは、これまで、伝統(あるいは慣習)が要求してきたものにいちいち刃向かってきたわけだけど、ここへきて、「結婚」という伝統的な形を取ることになって、そうなってみると、そこには、言葉にしにくい、敬意を表すべきなにかがあると感じるようだ。

スタンフォードのうれしそうな姿にちょっとうるっと来た。長い道のりだったね…って感じ。でも、相手は、「浮気公認。なぜなら、自分たちはゲイだもん」と、ここでも、「伝統的な結婚」には刃向かう…笑。

その後、四人の女性それぞれの「今、抱えている問題」が明らかになる。子育てに悩むシャーロット、ビッグと倦怠期気味のキャリー、弁護士事務所で上司からいじめを受けているミランダ。更年期をサプリや化粧品で乗り越えようとしているサマンサ。みんな年をとり、それぞれの問題を抱えている。

そんな四人は、アブダビへ旅行することに。なぜ、アラブを選んだのだろう。でも、これ、ナイスチョイスだと思う。シナリオとして。なぜなら、セクシャリティとフェミニズムを描くには、今や、中東を抜きにしては語れないと思うから。というか、イスラム世界のことを考えると、自分たちの立ち位置がはっきりしてくるからだ。

私も昨年の夏、エジプトに行き、イスラム世界の女性たちに恋愛観、セックス観などを総勢20名くらいにインタビューしてきた。今や、西側の国々では、とりあえず、女性たちは自由を得ているように見えるけど、イスラム世界ではまったく違う生き方が続いているから。時に性的な基準についてはね。

そういう背景をサマンサのお約束のナンパなどによって、遠景として描いていく。アラブ世界では、ブルカとよばれる、髪を隠す衣装を着ている女性が多いのだ。そこらへんから、自分たち女性の立ち位置を逆照射させる。キャリーが昔の恋人エイダンと再会して、ちょっとフラっときたり、アブダビの豪華なホテルライフなどもあり、おしゃれと恋愛部分もちゃんと描いている。

で、まあ、いろいろあって、四人はそれぞれの解決を見つける。最終的じゃないにしろ。

新鮮なところと言えば、ミランダとシャーロットが子供を持つ母親の愚痴を全開にしたところかな。これまでになかった「母親」というキャラクターを描いていた。

(でも、やっぱり、子供は最高にかわいい!ってな結論ではなく、「たいへんだから、サボりたくなる」ってことをメインにしたところが「SATC」らしい。シャーロットのセリフもさすが!と思った。セクシーなベビーシッターにひやひやしながらも、もし、夫がベビーシッターと浮気して、ベビーシッターがいなくなったら、そっちのが心配!って…。つまり、夫の浮気より、ベビーシッターの不在のほうが心配なんだ…笑。さらに、ミランダとシャーロットが、「ベビーシッターなしでひとりで子育てしている女性に!」って乾杯したところも良かった。ここには、ひとつも(日本映画だったら、喜んで描きそうな)「母親礼賛」はなかった。)

こういう細かいところを見ずして、どこを見るんだ、って感じ。テレビシリーズの頃から、「SATC」はそういうドラマだったはず。映画になったからって、細部を忘れてほしくないし、「1」より良かったかもしれない。

そんなわけで、堪能。でも、同時に、「年をとることの残酷さ」について考えずにはいられない。サマンサはいつまで、「現役」でいるんだろう。それって、本心?ビタミン剤やホルモン剤を山ほど飲みながらも、「女」をやらないといけないの?それが楽しい?

(でもまあ、バイアグラ飲みながら、「男」やりたいひといっぱいいるしなー。女もやっと男なみになったってこと?)。

しかし、恋愛や結婚騒動のあとに、人生ってなにが残るんでしょうか。仕事…?

そうなんだよなー。結局、いつまでも蜜月でいられるのは、仕事しかないような気がする。とりあえず、自分の場合は、仕事っていうか、「創作」ってことにしておこう。キャリーがエイダンにふらっとしたのだって、自分の著作をニューヨーカー(雑誌)で酷評されたあとだし。あれはわかるよね。そんなことされたら、誰かにちやほやされたくなって、部屋を飛び出して当然なのだ。自信を取り戻すために、昔の男に会ったのだ。そういうもんでしょ?

そんなわけで、テレビシリーズはかなり早い時期から見続け、全作くまなく見て来ただけに、「SATC」は、親しい女友達みたいに思える。映画としてどうこうなんて、批評できない。好きとか嫌いとかじゃなく、懐かしい女友達だもん。悪いところもいいところもわかっているよ。もちろん、好きだけど。

こういう作品を好きだと思える女性が世界中に増えていることは、きっとすごく良いことなんだと思う。少なくとも、女性にとってはね。

まだまだ、撮られていない映画がこの世にはあるんだ。オヤジの牛耳るこの世界で、握りつぶされてきた企画がようやく、最近産声を上げ始めたばかりなんだよ。それでもまだ、オヤジ好みの女を演じ続けたほうが、日本などでは有利だけどねー。わかっているけどねー。でも、負けないでゆきたい。

明日は、いよいよ、ちょー楽しみにしていた俳優さんを迎えての収録です。うれしす。