山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

「カンブリア宮殿」孫正義氏の回。

今日は、「カンブリア宮殿」の、孫正義さん登場の2回目を見ました。

孫さんのことを知ったのは、多分、自分は遅いほうで、ソフトバンクがIphoneを販売することになったくらいだと思う。よく知らなかったです、それまでは。その頃、chikirinさんのブログで、孫さんの講演を知って、ユーストリームで見て、すごいひとなんだなーって思いました。以来、注目しています。

なので、前回に引き続き、「カンブリア宮殿」を見ました。在日韓国人という出自に悩んでいた頃、アメリカを訪れたことがきっかけに、考え方が変わったとか、その後、お父さんが病に倒れた最中にアメリカ留学を敢行したとか、出自から始まって、企業としてのビジョンまでフォローされていて見応えがありました。

でも、もっと、トークを聞きたかった。正直なところ。ツイッターの紹介とか(もちろん、まだ、知らないひとがいるのだろうから、テレビの場合しかたないと思いつつ)、ツイッターを利用している人の紹介とか、そっちを削っても、孫さんの生トークをもっと聞きたかったなー。

豪華な社員食堂や、携帯の新機種をすべてチェックするとか面白かったけど、なかで、強く印象に残ったのは、出版に関する話題。

村上龍さんが、ipadで読める小説を発売したことを受けて、これで出版界は打撃を受けるとか言われているけど、どうですか、という質問に関して、「どうなるか?じゃなくて、どうしたいかでしょう」みたいなことを即答していた。なるほど、と思った。そして、

出版社が売っているのは、印刷技術や紙ではなく、作家を見つけて育てて、どのように売り出すかという広告戦略であり、そういったノウハウこそが、出版社の持つ力なんだと語っていた。

そうかもしれないなーと思った。自分は出版社のひとでも編集者でもないので、電子書籍については、危機感よりは歓迎の気持ちが大きいけど、本屋さんや出版社にとっては脅威であることは、事実らしいので、関心はあったのだった。

孫さんの言うとおりだよなあ。どうなるんだろう?って心配してても始まらないから、自分はこうしよう…この機会にこれをやってみよう、あれもやろう…みたいに考えるひとが生き延びるのだろうなあ。…と、他人事みたいに言っている場合じゃないけど。

実は編集者に対しては、いろんな意見があると思う。とあるひとから、「いい編集者に出会ったら、山田さんはもっと伸びるはずです」と言われまして、それじゃー今までの編集の方がダメみたいじゃないかーとひやっとしたけど、それほど、編集者の存在は大切だ…という考え方も出版業界あるいは、文学業界にはあるようだ。

(あ、自分、お世話になった編集の方々には深く感謝していますので、誤解なきよう…汗)

先日、とある作家三名の座談会をユーストで見ていたけど、そこでも、編集者の是非が語られていた。ということは、やっぱり、電子書籍の到来で問われるのは編集者の存在ってことになるのだろうなあ。校正のひとは絶対必要だと思うけど、編集者は必要なのか…ってことになるのだろうか。必要な場合もあれば、いなくても大丈夫な場合がある…ってくらいしかわたしにはわからない。しかし、新しい存在意義も出てくると思う。

先日、フランス人の編集者が来日して、わたしの本をフランスで出版する件について、話した。彼はもとは、フランスの老舗の出版社の編集者だったけど、数年前にやめて、自分で電子書籍の出版社っていうか、組織を作った。そこで、いろんな本を配信しようとしていて、そのなかのひとつが、「日本の哲学・文学」というシリーズ。

彼は、柄谷行人はじめ日本の哲学に深い興味を持っていて、でもフランスではほとんど日本の哲学書が翻訳されていない現状を残念に思っていて、電子書籍として、売りだそうとしている。文学についても、明治の文豪と村上春樹さん以外は、フランスではそんなにメジャーじゃないから、日本の作家をもっと紹介したいと考えているそうだ。

で、まあ、映画のことがきっかけで、進めてもらっている次第。彼は日本語、フランス語、英語、のどれでも同時に読めるようなスタイルを考えているようだ。まだ、30歳の若き編集者っていうか、電子書籍の会社の社長さん。

彼みたいな人に会うと、電子書籍の明るい未来を感じる。簡単に出版できるようになるのもいいし、翻訳されて世界中に届けられるのは、作家冥利につきる。

そういうことを含めて、孫さんのいう、情報革命ってホントに起きているんだなーと思う。自分も物書きのはしくれなので、それを楽しみたいと思う。もともと、書き物だけじゃなくて、テレビもやってるし、映画も作っているので、「紙」だけにしがみつく…ってガラじゃないし。いや、本という実在は結構好きですけれども。

しかし、孫さんみたいなバイタリティがあるひとってほんとすごいなー。そういうひとが成功を勝ち取っていくのだ。そして、成功したひとって、結構、謙虚な感じの方が多いよなあ。というか、欲にかられて…ではなく、志を持っているひとは、ブレないから、美しいというか。

あーブレっぱなしの自分。休みっぱなし、さぼりっぱなし。「ぱなし」じゃだめだよねー、自分。サルのように反省した夜。