奥泉光さんの新刊「シューマンの指」を読んでいる。
シューマンは、クラシック音楽の作曲家である。で、シューマンの作曲した曲にまつわる逸話と、その曲に魅了された人物たちの織りなす、ミステリー仕立ての小説です。
自分は、クラシック音楽をちっとも聴いてこなかったし、まったく詳しくなかったのだけど、ここ2年くらい、「名曲探偵アマデウス」を作るようになって、その世界に魅了されつつある。
まず、楽理が面白い。クラシック音楽には、文法みたいなものがあって、ただ単に美しいとか、心地良いとかだけで作られているわけでないってこと。基本の文法があって、それに則してみたり、あえて、はずすことで効果を期狙ったりできるのだ。
たとえば、「ヨナ抜き音階」というのは、民謡などに使われる音階で、この音階で作曲すると、「なんだか、懐かしい感じ」「田舎などを連想する」…曲調を作ることができる。
また、教会旋法というのがあって、古くから教会音楽で使われてきた旋法で、この旋法に則ると、「神聖な感じ」「清らかな感じ」を出すことができるのだ。
すっごいなー、すっごいと思いません?
つまり、インスピレーションだけで作られているわけじゃないってこと。
そして、クラシック音楽を学んで面白かったのは、やっぱり、音楽家の人生。人生と作品の関係性を知るのが、また、興味深いのだ。
ムソルグスキーの「展覧会の絵」という曲は、親友だった画家が、夭折し、彼の死を悼んだ遺作展をきっかけに作曲したものである…とか、
バレエというのは、当初は、お金持ちのおじさんたちが、その愛人を踊らせたり、愛人を発掘するものであったとか、だから、バレエ音楽とは一段低いものと見なされていたけど、それを芸術にまで高めたのか、チャイコフスキーだったとか…。「白鳥の湖」とか「くるみ割り人形」とかね。
こういうクラシック秘話みたいなことを知る度に「へー」とか「ほー」とか唸っていたわけだが、同時に「これって、小説になるなー」とも思っていた。
で、「シューマンの指」。
まさに、クラシック音楽の知識とそこからインスパイアされるものを作家がうまく熟成させて書き上げた小説だと思う。(まだ、途中だし、ミステリー仕立てなので、結末がわかるとよくないので、詳しい内容は書かない)。
友人の監督が、いい映画に出会うと、自分もがんばろーと思うって言ってたけど、わたしも「シューマンの指」を読んで、わーやっぱり、小説っていいなあ、読む快感ってこうだよなあと思い、小説、書きたくなりました。