DVDにて、映画「セイント・クララ」を見ました。
数日前に見た、「戦場でワルツを」のアリ・フォルマン監督の劇場用映画デビュー作。
アリ監督は、イスラエルのテレビのひとで、それまでは、テレビでドキュメンタリーを撮っていた。そして、この「セイント・クララ」で、映画デビュー。
イスラエルは、常に戦争状態にあって、映画は政府の援助がないと撮影できないそう。なので、年間7,8本しか製作されない。監督への道はとても狭いものだろう。(cf 日本は年間400本くらい映画が撮られている。)
「戦場でワルツを」はアニメだったけど、これは実写。近未来のイスラエルが舞台…ということだったけど、解説を読むまで未来の話だとはわからなかった。
舞台は中学校の一クラス。クラス全員でカンニングをしかけるような悪ガキが支配している。そのクラスには、ロシアからやってきたクララという少女がいて、彼女は超能力を発揮する。彼女の能力を使って、テストを満点で乗り切ったりするのだけど、一方で、悪ガキのリーダーを始め、多くの男子たちが、クララに恋をする。
クララの超能力は、ロシアの原子力施設の近くで育ったせいで生まれたらしい。ロシア、というか旧ソ連では、超能力の研究が盛んだったらしいから、クララみたいな超能力少女が出現しても不思議はない。
物語は、クララと悪ガキのリーダー、中学の校長、クララ、悪ガキ、それぞれの家族が絡み合って進むけど、なんとも不思議な作品。登場人物がみんな圧倒的に個性的で、服装も部屋のインテリアも、かなり狂っている。それがまた、なんとも魅力的だけど。
イスラエル…と言えば、戦争とかテロとかって部分が報道されるので、一般のひとの暮らしはなかなか想像できない。けど、当たり前だけど、普通に暮らしているひとたちがたくさんいるわけだ。中学もあれば、先生も生徒もいて、初恋も当然ある。
とにかく、なにからなにまで新鮮な作品。イスラエルの町の風景がまた、独特。ちょっと北欧を思わせるシンプルな建物が多い一方で、荒れ果てた町みたいな場所もあって、映像的にはエキサイティングだ。
イスラエルについて、ちょっとだけ調べると、10代の間に3年間、国民全員に徴兵制がある。だから、この監督も兵士の経験があり、「戦場でワルツを」のテーマである。パレスチナ人の虐殺に居合わせたりするんだな。
そんなギリギリの生活のなかで、映画を撮っていく…っていうのはどんな感じなんだろうなあと想像する。作品がどちらも濃密な感じがしたのは、そのせいもあるかもしれない。強烈な感じと、一方で、どこか醒めた、諦めにちかい感じが漂うのだ。
主人公の悪ガキのリーダーの少年の狂気じみた芝居がよかったなー。
数日前に見た、「僕のエリ、200歳の少女」でもイジメが出てきたけど、この「セイント・クララ」でもイジメが出てくる。平和でも戦闘状態でも、イジメはどこでもあるってことなのかな。
強烈で不思議な余韻を残す作品だった。
この監督、当分、追いかけたい。