山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

本「またね、富士丸」その2



ふたたび、「またね、富士丸」という本について、少し。

少し前に、この本を手にして読み、その感想を書いた。単純に心動かされることが多かったし、そのことを書きたかったから。そしたら、この感想を読みにココへ来る方が増えたようだ。しかも、著者の穴澤さんがブログでもリンクしてくださった。犬を通しての不思議なご縁である。正確に言えば、犬の死を通してだけど…。

(出版元の世界文化社ではかつて「MISS」という女性誌に短編小説を連載していたというつながりもありました)。

せっかくなので、もうちょっとこの本について書こう。

自分は、テレビのディレクターをしつつ、脚本、小説を書いたり、映画を撮ったりしています。そして、それが一番大事なことだとずっと思って来ました。

その一方で、1995年からゴールデンレトリーバーを飼い始めた。最初に飼ったのは、カナといいます。その頃、小説の賞をもらったので、その主人公の名前カナにちなんだのだ。

カナはとても美しい犬で、「ペット百科」(フジテレビ)にレギュラー出演するようになりました。(ついでに演出も私がやった)。カナは2000年に8頭の子犬を生んだ。そのうちの一頭がミニ。

正確には、カナミニスペシャルウルトラという長い名前を持つ、カナによく似た、ウルトラかわいい犬だった。

そのミニが先月、ガンにかかって亡くなった。病気がわかってから、わずか一ヶ月のことだった。これについてはこのブログにずっと書いてきたので、ご存知の方も多いと思う。

初めは、どんな手を使ってもミニを助ける…ということに集中した。しかし、結局、ミニは手の届かないところへ行ってしまった。その時、非常に強い衝撃を受けた。どれほど、自分がミニを大切に思っていたかを知った。

と、同時に、わたしは、犬について、なにも知らなかったんだ…ってことも知った。

ペット番組を作り、犬と馬に捧げる小説も書いている。(「もしも、この世に天使が。白の章」(講談社)という本です)。

でも、なにも知らなかった。病気のことも、犬の死がこれほどつらいことも。

犬はかわいい。たとえようもなく。それも、狭い部屋で一緒に暮らし、長い時間を過ごすと、他の誰とも築けない関係を作ることができる。

自分はどこの会社にも所属せず、子供もいない。その上、人見知りで、出不精なので、友達も少ない。

それでもいいやと思っていた。なぜなら、ミニがいるからである。ミニはいついかなる時も私を待ち、私を最優先に愛してくれる存在なのだ。だから、ミニさえいればいいと。

しかし、そのように過剰に愛すると、失ったとき、どんなに苦しむかってことがわかっていなかった。

そんなとき、この本を読んだのだ。あれほど、富士丸を大切にしていたひとは、どうしているだろう。どうやって、乗り越えたのだろうか。もしくは、乗り越えられないのか…と。

それに至る経緯がことこまかく、やわらかい文章でつづってあった。ひとが犬と出会い、犬と別れるということが、キレイなことばかりじゃないということ。

たくさん愛したぶん、たくさん悲しいのだということ。

よくある、セリフだけど、「泣きながら読みました」

大型犬は大きいだけに存在感があるが、悲しいことに寿命が短い。10年から13年くらい生きればいいほう…と言われている。あまりに短い生涯だ。

えっとね、この本は愛するものとの別れを体験するとはどういうことなのか…について書かれた本である。ある種の心のドキュメンタリーだと言える。事件、衝撃、悲しみ、呆然という経緯、そして、時間が過ぎること。

できれば、そんな目に誰だって会いたくない。だけどさ、犬という生き物と生きるということは、かならずそういう日を迎えるということでもある。そういう覚悟をするということでもある。

そんなことを思った。

あ…また、あんまし、感想になってなかったかもしれません。失礼しました。

最初の感想は、11月1日のブログです。

続き:

「またね、富士丸」で気になったこと。

動物は飼い主の不幸を背負って亡くなることがある…みたいなことを時々聞く。この本のなかでも、富士丸くんは、ある出来事が起こる前日に亡くなっている。なにかから飼い主を守ろうとしたかのごとく…。

その出来事とはなんであるかは、実際に本を読まれるといいと思うのですが、そういうことってあるかもしれない…ということです。

だとしたら、うちのミニは、なにから私を守るために、あっちの世界に行ってしまったんだろうか。ひとつには映画がある。映画とか撮ったから、その犠牲になったとか…飼い主が自分の欲望を実現した分、犬の命を削ったのではないか…とか。

あるいは…

私は11月に某国へ取材に行くことになっていた。政治的に混乱した危険かもしれない国である。ミニが病気にならなかったら、行っていただろう。もし、行っていたら、なにか事件に巻き込まれたのか?ミニはそれから、命がけで私を守ったのか?

あるいは…

私は今月末からパリに行く。自分の映画がパリで上映されるからだ。でも、もしミニが病気だったら、3日くらいで帰ってくるつもりだった。映画も大事だけど、ミニの命のほうが大事だからだ。だけど、ミニがいってしまったので、2週間くらい行くことにした。ミニは、私をパリに行かせるために、なくなったの?

あるいは…

…考えるとキリがなく、そんなふうに考えるものではないことはわかっている。だけどね、あまりに、悲しかったから、そんなふうにも考えてしまうのだった。

長い追伸でした。

普段あまり、やってこない、犬関係の方からメールをいただくようになったので、つい書いてしまいました。