山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

わけもなく家出したくて…

昨日は、歌人の枡野浩一さんたちが監督をつとめた自主映画を見に、阿佐ヶ谷まで行ってきた。

会場は、「よるのひるね」という小さなお店。

阿佐ヶ谷という街をちゃんと歩くのも初めて。なんとなく、「中央線文化人」という名前や、ライブハウスの街というイメージがあり、ちょっと緊張する。

場違いだよ、って言われたらどうしようとか…。

枡野さんとは、ツイッターが縁で知りあった。奇特にも、私のデビュー小説(「終わりのいろいろなかたち」といいます。95年に文學界新人賞というのをもらいました)を読んでいてくれて、その後も、映画も見に来てくれたり、いろいろ励まされてきた。

このネット時代、交流は続いても、実際にお会いすることもなく日々が過ぎていった。けど、「自主映画を撮った」と聞いたら、見にいかないわけには行かない。

催しのタイトルは、『古泉智浩プレゼンツよるひるショートショートムービー発表会』。

新潟で自主映画を何年…(何十年かもしれません、記憶が曖昧で失礼します)も撮って発表されている、自主映画のベテラン監督古泉さんという方が中心となり、枡野さんほか、漫画家の羽生生純さん、鈴木詩子さん、そして、「よるのひるね」の店主門田克彦さんら合計5名が監督した作品の発表会でした。

作品はすべて、ザクティという、携帯電話くらいの小ささのカメラで撮影されたもの。古泉さんの説明によれは、「お父さんが子どもの運動会などを撮るためのカメラ」。

同じ自主映画でも、もっと映像にこだわった主流派もいるそうで、主流派からはそんなカメラで撮るなんて…とやや邪道扱いされているらしい。確かに、「映画らしさ」を追求するには、不向きなカメラかもしれない。オートフォーカスで割とフラットな映像である。

でも。

もはや、「映画らしさ」ってなに?ってなもんでしょう。今や、iphone4で撮った映画もできようとしている時代ですから。

というわけで、家庭用モニターを囲んでの上映会が始まった。観客は、お店がいっぱいになるほど…20名くらいでしょうか。それぞれの作品はとても短くて、1分から長いものでも5分くらいだったと思う。

いろいろ面白い作品があったけど、枡野さんが監督した、ご自身の短歌が出てくるのが一番面白かった。ざっくり内容を説明すると、

女子が自動販売機にお金を入れて、なにか飲み物を買おうとするところから始まる。

日常のどこにでもある風景。ところが、その数秒後に、主人公の女子は、とんでもない世界へ連れて行かれるのである。

それもSFとかCG的な異空間ではなく、日常の動作によって、非日常へ…。

こんなにも簡単にひとは心理的な旅をするのだ。

そういうシュールな展開のなか、短歌も登場する。


 有罪になりたいがゆえに今いちど罪を重ねるごとき口づけ


短歌のあとには、さらに、衝撃の登場人物がとある飛び道具を使って…。

「身近なものをつかって、異様さを出す」

という…ちょっとプロのひとも考えされられるような演出でございました。

その他にも、「店のドアが重くて開けにくいこと」を気に病む店主…というささいなことをテーマにした作品とか、不思議で魅力的なものがありました。

で、みなさん、とても楽しそうだった。とにかく、撮ってみたい、ということで楽しんで撮っていることが伝わって来た。映像業界に一発かましてやろうとか、おれの表現を受け止めよ!みたいな暑苦しいものはなく、とても素直。

楽しいから作る。というクリエイティブ…と書くと白々しいけど、楽しいから作るの基本を見たように思った。

つい、忘れがちですからね、この基本を。

…あれ?なんのために、これ書いてたんだっけ?え?視聴率?え?お金?え?人間関係?え?え?え?ってこともありますから、自戒をこめつつ。


 わけもなく 家出したくて たまらない 一人暮らしの部屋にいるのに 


↑枡野さんの短歌では、コレ好きです。