山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

ドキュメンタリー映画「挑戦」

今日は、DVDで1964年にカンヌ映画祭の短編映画部門グランプリをとった、ドキュメンタリー「挑戦」を見た。

監督は、当時電通に勤めていた、渋谷昶子(のぶこ)さん。

監督協会が縁で知りあった、ベテラン監督である。現在、70代であるにも関わらず、ライフワークとおっしゃる、戦争をテーマにした作品を今も撮り続けていらっしゃる。

こう書くと、「反戦」を訴える、まじめで厳しい感じの「女史」とか「女闘士」みたいな女性を想像しがちだけど、全然ちがう。

作品を見つめる目は厳しいけれど、思考が柔軟で、冗談好きなので、話していると笑いが絶えない。

ずっと前を行く先輩だけど、とっても親しみやすい。

なので、半年くらいまえから、同世代の女性監督で集まっては、「渋谷ギャル会」として、渋谷さんを囲む女子会をやっている。

その関係で、貴重なDVDを借りることができた。

…と前振りはともかく、映画の話。

およそ50年前の作品であるけれど、作り手の意志がくっきりと伝わってくる緊張感あふれるものだった。

内容は、当時「東洋の魔女」と言われた、バレーボールの女子選手たちのドキュメント。

ニチボー貝塚という紡績会社に勤め、昼間は、工場で繊維を作る仕事をしている女子選手たちは、仕事が終わると、体育館で、時に深夜まで、過酷な練習に励む。

その姿をカメラは淡々と追いかける。

それも、今のドキュメンタリーで主流の、手持ちカメラを振り回し、ぶれたり、明かりが急に変わったりするようなものではなく、カット割りしたかのような、しっかりしたカメラワーク。

クレーンやレールを巧みに使い、ドラマみたいに、きっちり撮影している。

けど、その決められたフレームを飛び出してくるほどの、選手たちの気迫というか、必死さがある。

ひたすら、何十球も回転レシーブをする練習。

漫画に出てくるみたいな鬼コーチ。

選手が転んで、泣いても、ボールを投げ続けるのだ。

コーチは、転んで動けない選手にぶつけるみたいにボールを投げる。

すると、泣いていた選手もいつしか立ち上がり、再び、ボールを追いかけて行く。

おお。

子どもの頃みた、アニメ「アタック!ナンバーワン」の世界。それがリアルに存在していた。

日本の女子って、昔、こんなに強かったんだ。

選手たちは、ボールにくらいついていき、獲物を狙う狼みたいな目をする。

狼…というより、まっすぐで疑いを知らない目…とでもいおうか。

そういう表情を繰り返し追いかけている。

今のドキュメンタリーだと、ひとりひとりの選手へのインタビューとか、練習以外の生活とか、いろいろ入れたくなるところだけど、この作品は、ひたすら、過酷な練習風景だけを追いかけるのである。

選手ひとりひとりの裏側…というか、ひとりの女性…として、描いているのではなくて、「勝利のために、努力する人間たち」の姿を総体として、描いている。

その潔い選択が、成功している。

あ…先輩の作品を偉そうに批評しちゃった。でも、そうなの。

その姿勢はちっとも古びないなーと思った。

こういう作品を見る度に、「おまえは、どうするんだ」と突きつけられているような気がする。

自分はすぐ、ブレるので。人生もテーマもね…。

そして、一方で、こういう作品を20代で撮った女性監督がいたのだ…という事実に敬服する。

日頃、すぐ、「女だから不利だったんじゃないかしらん」という視点を入れがちな自分にとって、渋谷監督は、あっぱれな方なのだ。

非常に難しいことをさらりとやってのけて、今日まで現役で監督業やっていらっしゃるから。

そして、また、「おまえはどうなんだよ」という自責がはいあがってくる。

「まだまだ、若いし、これからいくらでも撮れる」と渋谷監督にはいつも言われる。そーそーなのだ。

めげてる場合じゃないのでした。