山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

映画「ふゆの獣」

今日は、自分の映画関係でうれしいことがひとつ!あった。

うふふ。これはおってお知らせします。まだ、情報オープンじゃないので…。

家に帰ると、短編集「オトナの片思い」(角川春樹事務所)も増刷になっていて(4刷り)、うれしいじゃないか。

そんなハッピー気分のなかで、昨日、試写で見た「ふゆの獣」について書きます。

なぜこの自主映画を見ることになったかというと、NY在住の映画ライターの女性が、この映画の主演俳優に私のことを紹介してくれたことから。

「いろいろ、恋愛映画に口うるさいひとだから、意見を聞いてみたら?…」みたいな感じでしょうか。

そんなわけで、ある日、俳優の佐藤博行さんから、一通の封書が届いた。

なかには、映画の試写状とともに、手書きの手紙が入っていた。真摯な文章で、自分の出演した映画を見てほしいと書いてあった。

ああ、これは見に行かなくっちゃ…と思った。ていねいな文面からは作品に対する熱い思いと演技に対する熱が感じられた。

こういうのには弱い。っていうか、結局、ひとを動かすのはひとの気持ちだったりするよな…と思う。

どんな作品かわからないし、もしかしたら嫌いかもしれないけど、とにかく、見ようと思った次第です。

試写の前日は朝まで、構成台本を書いていたので、睡眠不足でしたが、その日を逃したら次のチャンスはないと思ったので、決意して行きましたよ。義理と人情に弱いのだ…笑。

で、作品。

登場人物は男女4人。メインは20代後半くらいのユカコ。ユカコの彼氏・シゲヒサ。シゲヒサの浮気相手・サワコ。サワコに片思いするノボル。

ユカコがシゲヒサの浮気に気づいたところから、この四人の関係が微妙にずれはじめる。

基本はユカコ目線なので、前半はとても息苦しい。結婚したいと思っていた相手が浮気しているようだが、問い詰めることも別れることもできない。その苦しみのなかで、右往左往している様子がこれでもか!と重ねられていく。

なので、たいへん息苦しいのだが、後半になって、ひとりの登場人物の暴挙によって、その均衡が壊れる。息苦しさが一気に「おかしみ」に変化していく。

もしかして、彼らの真剣に見える恋愛ごっこはすごくあほらしいものなんじゃないか…って思わせるくらい。

実際、会場からは笑いが出ていた。

このくだりの作劇は秀逸だと思いました。この展開により、それまで見えていた登場人物のキャラクターが一気にちがう側面を見せ始めるから。おお、うまい展開じゃないかと思った。

脚本としても、映像的な設定としても、ある種の解放と崩壊が同時にあり、そこからラストへ持って行く、収拾の仕方には感心した。

そして、案内をくれたからじゃなくて、シゲヒサ役の佐藤博行氏の演技はとてもよかった。浮気をしてもすこしも反省しない、ひどい男をしれっと演じている。

しかも、一番悪い奴なのに、なぜか憎めない。セリフが少なく、表情やしぐさだけで、「反省のなさ」や「甘え」や、でも一方で、ある種の正直さをうまく表現している。

苦しむ女性が主人公なんだけど、彼女にはあまりシンパシーを感じなかった。どちらかといえば、浮気相手の女子サエコのほうがすんなり見えた。

たぶん、それは自分が「悪いやつ」だからだな…。一途なことを見せびらかすようなひとがどーも、苦手でね…すまん。



7月2日(土)よりテアトル新宿でレイトショーとのことです。



ふゆの獣

今時、めずらしい、恋愛を正面から描いた作品でした。