山田あかねの一喜一憂日記

テレビディレクターをやりながら、小説書いてます。映画も撮りました。脚本なども書いてます。 本、買って下さいね。

アメリカ大使館妄想

今日は、アメリカのビザをとりに、アメリカ大使館に行って来た。

いや~緊張した。

大使館の正門前でタクシーを降りて、何気なく歩きだそうとした瞬間、警官に呼び止められた。

「どこへ行くんですが?」

「え、あ…」

私は、世界各国どこへ行っても、もっとも疑われにくい、日本の中年の女である。

髪を赤く染めているわけじゃなし、特別なファッションをしているわけじゃなし。

そりゃあ、朝の7時くらいまで起きてて、昼間はたいてい寝ていて、いったい、なんの仕事をしているかわからない…という意味では怪しい。

結婚もせず、倫理観に乏しく、しかし、犬猫は熱烈に愛し、無縁社会礼賛で、価値観の基準がずれている…という意味でも怪しい。

けれども、見た目はごく普通の中年の女であるので、どこの空港でも呼び止められたり、なにかを疑われたことがない。

いつもにこやかに通過だ。

が、つかまった。

初めてなので、びっくりした。それほど、アメリカ大使館前は緊張感があふれていた。

「ビザの申請に…」と答えたら、すでにできている長蛇の列に並ぶように言われて、事なきを得た。

しかし、それからも緊張した。まず、なかに入るまでに30分くらいは待ったか。

入り口で荷物検査があり、携帯電話などを預けないといけない。

入り口でその準備をしていると、列に並んでいた、中国系に見える中年の男性の電話のベルがなった。その男性はいったん、列をはなれ、電話に応答している。

偶然、入り口付近に来たときに電話がかかってきたのだろうけど、これが、ドラマや映画なら、絶対、なにかのきっかけになる。

ひとつは、ミスリード。怪しいと見せかけて、あとで、安心させるためのひっかけである。

そして、もうひとつは、(こっちが怖いけど)、テロリストであったり、なにか事件を引き起こす人物ってことである。

とにかく、並んで待っているだけなので暇である。自由に使えるのは想像力だけだ。私はそのおじさんの動向が気になって仕方ない。

なぜなら、彼は、1度電話を切った後も、列からはずれたまま、いろんなところに電話をしているのである。もちろん、最初の電話をきっかけになにかが起こり、それに対応しているだけかもしれない。

家にお弁当を忘れたから、届けてくれと頼んでいるとか…、犬に朝ご飯を上げないで出てしまったので、なんとかしないといけない…とか。

確かに、犬にご飯をあげないででかけたらいけない。犬は空腹で待っているぞ。

善意で考えれば問題のない話である。しかし、想像力には限りがない。

彼の携帯は、なんらかの信号を受けることで、小型爆弾になる仕組みなっていて、それをおもむろに、館内に投げ込むかもしれない。

それくらい、入り口に近い場所だったので。

彼が電話爆弾を投げ込み、入り口付近を制覇したあと、ビザ申請で並んでいたと見せていた仲間たちがいっせいに、館内に侵入するかもしれない。

わードラマの幕開けだ。

これだけなら、それほど珍しくないアクション映画の始まりだけど、現実になったら怖い。最初の爆破で飛ばされるか、仲間が侵入するときに倒されるか、人質にされるか…。

善良な中年の日本女性(…わたしのこと)って、いかにも人質向きじゃないか。

うーそうなったら、どうなるんだろう。まず、ビザはとれないよな。ということは、ロケは中止か。いや、それどころか命が危ないかもしれないぞ。

日本政府は私の命を救ってくれるだろうか。あと数メートル先はアメリカだ(大使館内)。人質として、館内まで運ばれたら、交渉先はアメリカってことになるだろう。

ダメだ、アメリカ政府が私を救う義理がない。アメリカに対して、なんのいいこともしてない。むしろ、嫌われているかもしれないぞ。なにしろ、私は、ロシア文学科出身なのだ。あの冷戦時代に、ソ連の文学を勉強していたのだ。裏切りものと思われるかもしれない。

いや、アメリカ文学もとても好きだし、尊敬する作家の名前を10人上げろといわれても困らないぞ。しかも、大好きなエリカ・ジョングからはツイッターでフォローされているんだぞ。そうだ、カナダ人だけど、マーガレット・アウトウッドからもフォローされている。アウトウッドは、ノーベル賞受賞作家だぞ。

映画でもいい。昨日は徹夜で、「ゴッドファーザー」のデジタルリマスター版を見たよ。

シナリオの書き方は、ハリウッドの教科書で学んだ。足りないか。

ここ2年ほど、ベルリッツに通っているから、幼稚園児程度の英語なら話せるぞ。だめか…。

いくら数えてもアメリカが私を助ける理由を思いつかない。もはやこれまでか。

じゃあ、人質でもいいことにしよう。案外、小説のネタになるかもしれない。そうだ、無事に生きて戻れたら、手記を書こう。これは売れるぞ。よし、それを映画化しよう。

えっと主役の私は…そうだな、鈴木京香さんにお願いしよう…(なんてずーずーしい)。いや、ちょっと若いけど、演技派の寺島しのぶさんはどうだろう。うん、いいなー。

いや、もしかすると、映画化の段階で、「主役は、中年じゃなくて、20代かせめて30代って設定に変えてもらえませんか」なんて言われるかもしれない。

さらにこう言われるかもしれない。あとでわかったことだけど、実はその時点で、仲良しのイケメン俳優が館内にいた。

そうなると彼もまた、人質になる。ということは、私の設定を若くすると、その俳優とのラブロマンスも話に織り込める。

う~ん。それもなかなかいい。じゃあ、誰だ、誰をキャスティングするんだ。そもそも、それ、私、監督やらせてもらえるんだろうか。原作だけ、脚本だけって言われないか。

だって、アクション映画だよ。そんなの撮れるの?いや、暴力を描いているけど、リアルにしたい、ちょっと「ハートロッカー」を意識したい。

それに、私はイスラム教にも興味があり、特別なエピソードを持っている。それはいずれ、絶対小説にするつもりだから、ここでは書かないけど、映画化するなら、その逸話は使えるかもしれない。

…ということは友人のムスリムも偶然、館内にいてほしいなー。あ、しかし、イケメン俳優もいたんだった。

…すみません。あんまり寝てなかったので、頭のなかで、このようなアホかと思えることをぐるぐる考えておりました。

その後もずっと待つことになりましたので、途中からは「ビザおりなかったら、どーしよ」と人質ではなく、もっとリアルな心配をしていたのですが。

ちなみに、入り口で電話していたおじさんが、その後、どうなったかは確認できませんでした。私のほうが順番が早くて、先になかに入ってしまったのでね。

でも、なんか、面白かったー。