山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

舞台「クレイジーハニー」

見た順に感想を書くシリーズです。

しかし、ここのところ、ブログをサボり気味なんですが、その理由ははっきりパソコンの不調であります。

愛用のMac bookproが、熱暴走というのをしておりまして、ものすごく熱くなる…ジージー変な音がする…という状態で、買い換えるか、直しに出すかで迷っていて、その間、dellのノートブックで使っているんですが、どーにも使い心地が悪い。

このpcだとなにも創造的なことをする気にならないから不思議。

もともと経理ジム用に買ったやつだから、仕方ないんですが…。

そんな文房具が変わっただけで書けなくなるなんて、ダメだ!という考え方もあるでしょうけど、いやいや、道具って大事ですよねー。

武士だって刀次第でしょう。

といいつつ、dellさんで書いてます。前置きが長くなりました。それって年寄りの証拠かなあ。

本谷有希子さんの作品は、ずいぶん前から欠かさず見ております。基本、ファンです。小説も全部読んでおります。

でもって今回の「クレイジーハニー」

長澤まさみさんとリリー・フランキーさんという、異色の取り合わせ。

でも想像してたよりはまってました。

その理由のひとつが、リリーさんの演じるゲイ(…でいいのかな、おかまさん?おねえ?)が、リリーさんにはまっていたこと。それとも、「おねえ」の芝居って、誰でもうまく演じやすいのかな。

ざっくりとあらすじを書くと、舞台は、ロフトプラスワンみたいな、トークショーをやるライブハウス。

ここで、美人携帯小説家(長澤まさみ演じる)と、彼女の親友のゲイ(リリーフランキー演じる)が、トークライブをやっていてその一晩の物語。

美人携帯小説家はすでに落ち目になっていて、それほどお客が集まっていない。そこで、トークライブのあと、ファンとの交流をそのまま、本にしようと、しかけている編集者がいる。そのほか、彼女のファンの面々たち。

このようにして舞台は始まるのですが、長澤さん演じる、携帯小説家が、美人だけど、性格悪い…というか、露悪的というか、正直者という、本谷さんの主人公に多いタイプ。

彼女の暴走振りとそれにつきあうゲイの友人とうすっぺらい編集者とクールなライブハウス従業員と、集まったファンたちの攻防です。

見ているうちに、これは、インターネット上の「祭り」に似ているなーと思った。

匿名のファンたちは、携帯小説家にいろんな思いをぶつける。それを利用し、笑いながらも、一方で傷つき、振り回される作家とその親友。

それらを少し離れたところで見て、お金儲けにつなげようとする編集者。

構造的にはインターネットにおける、やりとりみたいだった。

作家とゲイだけが、特定され、そのほかの「みなさん」は一方的に批判するだけ。自分自身には言及されることがない。

この不均等な関係。このような状態が生まれたのはネット社会ならではだけど。

それを描こうというのだから、なかなか挑戦的であり、スリリングでした。

一方で、ジリ貧の出版界の舞台裏を見せられたようでもあり、これはこれで興味深かった。

気になったのは、先日見た「死ね!死ね!シネマ」もそうですが、その作品の作り手が、作品のなかに登場してしまっているんじゃないか…っていうくらい、業界批判が混じっていること。

本気の批判なのか、ある種の戦略なのかわからないけど、各所で、作者本人の、その世界への呪詛が語られているようで、そういう見方がよろしくないと思いつつも、ひやっとすることしきりでした。

(特に編集者への言及とか…笑)。

それにしても、直球の舞台だった。

リリーさん演じるゲイに、中上健次原作、柳町幸男監督の「19歳の地図」に出てくるゲイを思い出しました。

自己嫌悪で、自殺しようとして飛び降りたけど死に切れず、足が不自由になったゲイが「死ねないのよ!」ってのた打ち回って、叫ぶシーン。

ずっと前にみた(20年以上前)映画なので、間違っているかもしれませんが、そのカットが衝撃的だったので、覚えている。

どうしようもない人間が、死にたくでも死に切れずに、どうしようもなく生きて「死ねないのよ」と叫ぶ深い痛み。

この舞台のふたり、携帯小説家もゲイも、「死にきれない感じ」で悪態ついて生きてる…それがよかった。

安全な場所にいて、ひとを批判してばかりいるやつら(=観客)より、自分をさらし、自分の欲望のままに正直に生きて、苦しんで笑われる道を選んでいる者たちを、結局のところ、肯定して描いている。

…先日、ツイッターで、枡野浩一さんが、『匿名」問題について、ひとしきり書いてたけど、それを舞台の上で、やってみせたようにも見えた。

舞台にしろ、映画にしろ、どんどん露悪的というか、舞台裏を隠さない方向へ進んでいるような気がする。

一方で、メジャーな世界(…とはいえ、本谷さんの舞台はもはやメジャーだけど…)、テレビとか大きなサイズの映画とかでは、そういった舞台裏なんて、いっさいないみたいな、破綻なきストーリーが展開されている。

二極分化しているような気がする。

でも、いろんなもんが出てきたほうが面白いから、どっちも盛んになってくれてOKだと思っています。

*テレビドラマ「フラッシュ・フォワード」と「glee」は連続ものなので、感想はもっと見てから書きます。

明日は、いよいよ、映画「ツリー・オブ・ライフ」を見に行こうと思っています。

傑作というひともいるなか、「退屈した」「寝た」と感想を書くひともいるので、なおさら楽しみです。

だいたい、古くからの映画ファンは絶賛ね。

でも、最近のテレビみたいな映画しか見てないひとは、寝ちゃうらしい。

ううむ、楽しみです。