山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

ちいさな後悔。

ロンドン16日目。

今日は学校の帰りに、borough market(バラマーケット)へ行ってきた。

火曜日に出かけて、全然やっていたなかったあの場所である。



今日はこんな感じでにぎやか。



色とりどりの野菜や果物、肉、魚、チーズ、パンなどが売られている。



見て歩くだけでも楽しいけど、やっぱり、食べなくては。



生ガキが売っていたので、ひとつ買ってみた。



その場で殻を開けてくれる。レモンをしぼっていただきます。

うまっ。白ワインとか飲めるといいけど、そうもいかず。



魚屋さんもにぎわってる。ので、つい。フィッシュ&チップスをまたもや。



さらにケーキもひとつお土産に買いました。



市場をあとにして、ドッグランドと言われる、港があった地域を歩く。ドッグはdogじゃなくて、dockです。
ここは戦災を免れたそうで、昔の町並みが残っています。



ここを抜けると、グローブ座があります。シェイクスピアの劇場ですね。



演劇関係じゃないけど、やっぱり見てみたかった。



吹き抜けなので、めちゃ寒い。



天気が悪くても上演するそうで、テンペストを上演してたら、本当に嵐になったりして、盛り上がるらしい。

そのようなことをガイドさんが語っていた。

こういうところがイギリスと日本の違いだなーと思った。

日本は国技館なんかでも、テレビの中継がしやすいように、柱を取り払ったり、空調を行き届かせたりしている。どんどん新しい技術を取り入れて行く。

一方、イギリスって、不便でも昔のままにこだわるよなあ。それはそれでいいと思う。

みんなちがって、みんないい…ってことで。

昔使っていた衣装なども展示されていました。刺繍がきれいなので撮った。



劇場見学のあと、再びテートモダンへ。



昨日の日記に工場だったって書いたけど、間違い。発電所だったそう。そんな雰囲気の残るスロープ。



テートでこの2冊を買った、デビッドホックニーの犬の絵の本と、ストリートアーティストのバンクシーの本。ロンドン滞在中にバンクシーの書いたリアルストリートアートを見たいな。



ホックニーの本は犬への愛情があふれていて、泣きそうになった。

何かを見つめ、それを描くってことは、その対象を愛するってことだなあとしみじみ思う。

最後に本に関する話題をひとつ。

これは、私が日本から持ってきたガイドブック。



なんの変哲もないガイドブックだけど、よくみると、96~97年版。

そんな古いガイドブックなんて役に立たない。

それに気づいたのは昨日だった。去年の冬にもイギリスに来たので、その時使ったガイドブックだと思って持ってきたのだ。

しかし、読んでいるうちに、どーも変だと気づいた。地下鉄の路線が微妙に違うし、物価に対する評価もだいぶちがう。

これはおかしいと思い、奥付を見て、初めて15年以上も前のガイドブックであることがわかった。

なんで、そんなものが?

これは、亡くなった父親の本であった。

今を去ること15年前、両親にヨーロッパ旅行をプレゼントした。数少ない親孝行のひとつである。

その時、たぶん、父が買ったものであろう。生真面目で予習好きの彼が熱心にこれを読んで、初めてのヨーロッパに旅立ったのである。

ここで、ガイドブックに、父の書いたメモがはさんであたったり、なにかしら、不思議な言葉が残されていたら、ドラマの始まりだけど、そういう具体的なものはなかった。

が。

少しの間、亡くなった父親のことを思った。昭和一桁の生まれのくせに、洋風の食事を好んでいたので、マーケットを歩いていたら、連れてきてあげたかったなーと思った。

ヨーロッパの旅はパックツアーだったから、そんなにゆっくりできなかっただろうし。

今なら、私の借りているアパートに泊めて、マーケットで好きなだけ、チーズとかポテトとか、ステーキとか楽しんでもらえたのになー。

ちゃんとしたレストランも好きな人であったが、市場の、揚げたてのfish&chipsやホットドッグなんか、すごく喜んだだろうなあ。

………

自分のような親不孝ものでもそんなことを思うこともあるのだ。一冊のガイドブックをきっかけにね。

テートモダンなども、興味深く見ただろうなあ。

しかし、父は、モダンアートより、印象派のほうが好きだったかもしれない。

日暮れのテムズ河を見ながら、亡くなった父や犬を思った…。

そんなわけで、また、一日中、ロンドンを歩き回っていました。

よるご飯は、バラマーケットで買ってきたチョコレートケーキでした。

明日はまた、ドッグホームでお仕事です。