山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

小説「ミレニアム1,2,3」

映画「ドラゴン・タトゥーの女」の原作であるところの、「ミレニアム」1,2,3を通して読んでました。

原作はスウェーデンの小説です。

さっき、テレビで「世界の女性」をテーマにしたバラエティ番組を偶然見て、それによれば、スウェーデンは、世界有数の「女性が生きやすい国」であることが紹介されてました。

シングルマザーでも子育てしやすいとか、結婚しても家事は夫と分担するのが当たり前だし、育児休暇は3年間とれるし、給与の70%も保証される。

今、話題になっているベビーカーだって、パパ(男性)が押してるのが当たり前。ベビーカー=女性、ってわけではない。

そんな女性が生きるのに理想的な国で、この「ミレニアム」という小説が生まれた…ということが不思議でした。

ミレニアムの主人公は、ジャーナリストのミカエル(男)と天才ハッカーでいろいろ困難に巻き込まれるリスベット(女)のふたり。

この二人が大富豪一族の少女行方不明事件や元ソ連のスパイの事件やらを解決していくわけですが、その根底にあるのは、女性差別やドメスティックバイオレンスやレイプなどへの強烈な批判。

事件解決の手助けをするのも、常に女性。警察でも公安でもマスコミでも大企業でも、必ず、「優秀で魅力的な女性」がいて、この女性の活躍と手助けによって、ミカエルもリスベットも救われるわけです。

だいたい、ふたりの主人公、ミカエルとリスベットを比べても、圧倒的にリスベットが魅力的に描かれている。リスベットのファンのが多いだろうと思う。

作者はこの作品を書き上げたあと、急死したスティーグ・ラーセンという男性です。

ちょっと不思議。これだけ女性が活躍しているスウェーデンなのに、それでもまだ足りない、というか、こんなに悪いやつがいるんだ、って感じで、告発するようなお話だから。

この作者が日本の現状をしったら、憤死してたんだじゃないかしら。

日本なんて、ベビーカーで電車乗ったら、白い目で見られる国でございますよ。

先日、子育て経験のあるキャリア女性とこの「ベビーカー問題」について話したら、彼女も子育てママだったのに、「最近の母親はマナーがなってない」と怒っていた。

え?

とてもびっくりした。彼女は、男性社会で認められるために頑張ってきて、いわゆる「名誉男性」になっている。男性と同じ目線で、ものをみて、批判していかないと仲間扱いされないから。だから、一緒になって、
「ベビーカー、邪魔!」という。

こんな国だよ、日本は。

「ミレニアム」はすぐれたミステリー小説だけど、根っこに女性差別というテーマがあることに言及する日本の批評家はいないよね。解説にもひとことも出てこない。まるで、そんな視点はないかのように。

これが日本だよね-、と思ったのでちょっと書いておきました。