山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

「orange is the black」

自分の映画と本のことばかり書くのに、やや疲れました。

で、ここのところ、ずっとはまっている、NETFLIXのオリジナルドラマ「ORANGE IS THE NEW BLACK」について。

ついに3シーズンまで全部見たので。

いやーラストシーンでは泣きました。

悲しいとかかわいそうとか、そういう涙ではなく、じわじわとした感動というか、女性たちが、湖で戯れているだけのシーンなんだけど、すばらしいなあと心から思った。

そして、こういうシーンを撮れたらいいなあと思って、映像の仕事をしてきたのだ、とあらためて強く思った。

orage is the new blackは、ニューヨーク州にある、女性の刑務所が舞台。

主人公は、白人で美人で大卒で中流以上の家庭出身のパイパー・チャップマン。

遊び半分で、ドラッグの運びやをやったことから逮捕される。

彼女が刑務所に収監されるところか物語が始まるけど、主人公はチャップマンだけど、彼女だけを追いかけるのではない。

むしろ、面白いのは他の女囚達だ。

アフリカ系アメリカン人、ヒスパニック、アジア系、といろいろな人種がいる。

観ていて心配になるほど、人種にまつわる強烈なセリフが多い。

女囚たちは、人種ごとにグループを作り、それぞれの領域も決まっていて、時に反目しあう。

刑務所のなかだけど、外の世界と同じようなことが起こっている。

最初は、「犯罪者」として、彼女たちを見ているんだけど、それぞれが犯罪に手を染めることになる過程が描かれるにつれ、彼女たちだけが悪いのではないことがわかってくる。

ものすごい貧困や育児放棄や差別など、すさまじい環境や悪意のなかで生まれ育つ。

もちろん、環境だけが犯罪を生むのではないと思うけれど、その描き方が辛らつで目が離せない。

アメリカ社会の暗部を次々と見せられている気がする。

そして、やはり、これは「女性」がテーマの作品なのだ。

女性だからこその搾取やいじめや差別が犯罪のきっかけになっている。

その描き方が、とてもシリアスでフェア。

そして、もうひとつの大きなテーマが、同性愛。レズビアンが度々登場する。

レズビアンについては、「Lの世界」などでも描かれていたけど、こっちはもっと日常的とでもいうのでしょうか。

「Lの世界」は美女ばかりだったからね。

この作品を見ていて思うのは、「これまでに描かれたことのないもの」だということ。

女性たちが犯罪に落ちていく時の気持ちや、彼女たちを取り巻く、男性や社会に対する思いがていねいにていねいに描かれている。

そこにいるのは、一人の人間でたまたま、女性という性をもった人間なんだけど、その女性という属性ゆえに被る数々の不利益が彼女を犯罪へしむけていく。

その過程のそれぞれが、いたみをもって、リアルに描かれている。

こう書くと、シリアスな物語に聞こえるけど、ドラマはとても猥雑で、きついユーモアにあふれている。

これほどいろんな体型、容姿の女性がいるんだとあらためて思えるほど、出てくるのは、細身の美女ばかりではない。

極端に太った女性や年寄りや、とにかく、あらゆる年齢、人種、体型、容姿の女性たちが、脱いだり、セックスしたりしている。

実はそれは当然のことで、この世は美男美女だけでできているのではないから。

でもさ、なかなか、そういうものって描かれてこなかったんだよね。

ストーリーがよくできているか、とか、映像が美しいか、とかには、私はもうあまり興味がない。

そういうのは、もう、たくさん見たから。

これから見たいのは、「これまで、描かれてこなかったもの」

これまで「作る側」にたてなかったひとたちが作ったもの。

弱かったり、チャンスをもらえなかったり、ありきたりの枠にはまらなかったりで、作る側に回れなかったひとたちの作品。

新しいものはそこからしか生まれてこないよね。

物語はすでに全部書かれてしまった…というのは、「描く側」にいられたひとたちのセリフ。

まだ、全然、描かれていない世界がたくさんある。

そういうものを見たいよね。

そして、できれば、自分もそういうものを作りたいです。

女のひとたちは、男のひとがいない世界でも生きている、という当然の事実がこれまでどれほど描かれてこなかったか。

あらためて、そういうことを思うのでした。