山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

スター獣医師ではなく。

「ザ・ノンフィクション 花子と先生の18年 人生を変えた犬」(フジテレビ)

ご覧くださり、ありがとうございました。

後編は、視聴率も同時間トップとなり、ツイッターなどでも大きな話題となり、

感謝しております。

 太田快作先生のことを少々書いておきます。

太田さんと初めてあったのは、2018年の秋ごろでした。

とある企画の取材のため、ハナ動物病院を訪れました。花子さんももちろん、元気でした。

日本の動物保護、これからどうなる?みたいな話をしていたのですが、一番感銘を受けたのは、「スター獣医師になるつもりはない」と言っていたこと。

 太田さん自身、学生のころから「犬部」を作って、動物保護をやってきたし、

今も、休みの日のほとんどを、保護活動にあてていて、里親会もやってるし、

福島にも通っているし、野良猫TNR(避妊去勢手術)もやっていて、

ほんとすごいので、ほめていたわけです。

そしたら、「僕が褒められても仕方ない」みたいなことを仰る。

「普通の獣医さんが動物保護を当たり前にやる社会になることが目標だから、

僕がほめられえもしようがないんです。

ハナ動物病院みたいなのが、日本中にできて、野良猫や捨て犬の治療とか、当たり前にやるようになるのが、目標」と。

 目からウロコでした。

 それまで、動物保護というのは、動物保護団体やボランティアが中心で、

それで、日本の殺処分が、年々減ってきたのだから、それがもっと進めばいいのでは…、

保護団体への理解と寄付が進めばいいのでは、と思ってきたんです。

なので、映画「犬に名前をつける日」の上映会のあとのトークでは、

「保護団体を支えましょう」「寄付をしましょう」と言ってきました。

しかし!

そればかりではなかったと。

 以前、イギリスの動物保護を取材したとき、イギリスにはそれはもう、立派な保護団体があって、動物たちが助けられているんですが、一方で、普通の動物病院の力もある、ってことを知りました。

 

ロンドン在住の川田彩代獣医師から教えてもらったんですが、

イギリスの動物病院は、地元の動物保護のベースになっていて、野良猫とか飼い主の見当たらない犬などを連れて行くと、そこで、治療とかしてもらえるんです。

(この時の価格なんですが、すみません、最初に「無料」って書きましたが、

 確認したところ、病院によって、割引率が違うそうです)

  一般の病院とは別に、無料で診察するチャリティー病院というもあり、

そこは、生活保護であったり、社会的弱者が、自分たちのペットを無料で

診察・治療を受けることができるそうです。

(イギリスの保護団体・RSPCAの病院を2019年のNHKの番組で取材しました)

その資金はすべて、募金などでまかなわれていて、獣医師や看護師はちゃんと給料をもらい、社会保障などもあるそうです。

獣医師さんたちは、それぞれのかたちで、保護活動に参加しているんですね。

太田さんは、イギリスの事情を知らずに、同じ事を目指していたんですね。

「自分ひとりが目立つのではなくて、動物保護を当たり前にやる獣医師がもっと増えて欲しい」

そうかー、と思いました。

これですっかり、太田さんのファンになり、NHKのBSプレミアムで放送することになっていた「家族になろうよ 犬と猫と私たちの未来」(2019年2月放送)に出てもらうことにしました。絶対、広めた方がいいと思ったから。

3時間生放送にいきなり出演してもらって(その時、石田ゆり子さんとも初共演)、

でも、これはもっと取材せねば、と思って、2019年4月から取材をしました。

その時点では、どこでどう放送するか、まったく考えてませんでした。

とにかく、撮っておこうと。(まあ、いつもそうですが)

そして、取材を続けていくなかで、太田さんの考える、「動物と人間の関係」みたいなものがだんだん見えてきました。それを1年追いかけました。

目標は、太田さんのような獣医師さんが増えること。

(そしたら、太田さんも少し休めるし)

太田さん本人、とても頼もしいんですが、彼ひとりをスターにして、

褒めて終わるのではなく、広がっていったらいいなと思います。

ハナ動物病院みたいな病院が増えること。

太田さんみたいな獣医さんが増えること。

そのきっかけになれたらいいなと思っています。

 

(でも、取材過程で、花子さんが倒れて、そこからはまた、別のテーマを感じて

撮ってました。これはまた、あらためて書きます)