山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

映画「ボーイズ・オン・ザ・ラン」

今日は、久しぶりのお仕事で、昼間から外に出ました。…すみません、普通、あたり前ですね。

久しぶり(およそ2週間ぶり)だと、どうやってふるまっていいかわからなくなり、最初は緊張して、うまくしゃべれなかったりします。もう、何年も一緒に番組作っている方たちなのに…。いつまでたっても、自分は、ダメ人間だと思いました。

それでも、とりあえず、仕事は順調(…だと思う)にこなし、終わってから、渋谷で、三浦大輔監督作「ボーイズ・オン・ザ・ラン」を見ました。自分的には、今年一番の期待作です。ポツドールの芝居を見てから、すんごいなーとほとほと感心しており、感心が高まり、ポツドールの舞台に出ている役者さんたち数名に、自分の映画に出てもらったほどです。

どうやって演出するのか、いつか、こっそり見に行きたいです。それほど見たかったのですが、自分の映画が公開中は、なかなか、素直になれず、気持ちを抑えておりました。けど、さすがにもういいじゃないか、見たいもんを見なくてどーするよ!ということで、行きました。正直、「フローズンリバー」とどっちにするか迷ったけど、正直な心に従いました。

それで、感想なんですけど、予想より残酷でもエロくもなかった。なんか、もっと、ものすごいものを見せられてしまうのじゃないか…帰り道、自分なんか、映画撮っちゃだめだ…と深い穴に落ちるのではないかと心配しておったのです。

非常によくできた、青春映画だった。もちろん、普通の清潔な恋愛ものに比べたら、キツイんでしょうけど、舞台と比べたら、まろやか。映像だとそうなるのかな。それでも、人物を描く目線には、いっさいゆるむところがなく、とことん、「人間ってこういうもんでしょう」という冷徹な目が光ります。

主人公の田西くんは、最初から最後まで、とことん、惨めです。救いはないです。やられっぱなしの2時間だ。そして、彼が恋する千春ちゃんも、キレイごとゼロです。演じている黒川芽以さんは、「名曲探偵アマデウス」でよく仕事するんですけど、勘の良いまことに芝居のうまいひとです。その清純でかわいらしい彼女が、きっちり最後まで、清純派ぶっちぎってくれてよかった。このひと(=三浦氏)なんで、こんなに女子の気持ちがわかるんだろうって感じ。リアル。

いくらでも、観客を気持ちよくさせる瞬間は、あったと思うんです。それをいちいちはずしていく。カタルシスよりリアリティを選択しているんだと思う。その心意気が好きです。そして、そのような、ありがちなカタルシスでは描けない到達点…そこには、案外、なにもない、バカらしい俺…みたいなものしかないんだけど、それがよかったです。

見たのは、渋谷のシネセゾンですが、そこに、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」のポスターが貼ってあり、監督からのコメントが書いてあった。これがね、見終わってから読むと効くんですよー。確か、

見終わって、いかがでしたか?
嫌な気持ちになりましたか?
そうなら、よかったです…。

↑みたいなことが書いてあった。やられたー。自分もそういうこと、書けばよかった。

映画見てさ、気持ちよかったねー、やっぱり、愛だよね、愛…とか言って、手をつないで家路に着くのを阻むような、自分がこれまで見て来たものは嘘かもしれない…と思えるような、そういうもんじゃなきゃ、見てもしかたないと思うのは、自分だけなんだろうか。

そんなわけで、邦画解禁したので、次は、「イエローキッド」です。岩瀬亮さんでてるしねー。

あ、数日まえの訂正を。伊丹十三監督が、死に方を描いたのは、「大往生」ではなく、「大病人」でした。間違えてました。すみません。