そんなわけで、「桐島、部活やめるってよ」(朝井リョウ著)を読んだ。
ひとつの高校の数名の生徒の独白からなる短編がいくつか続き、そのなかで、唯一共通しているのが、「桐島が部活をやめる」って話題だけだった。
映画ほど、桐島に振り回されていない。ただ、それぞれのキャラクターと生活と気持ちを描くのに、共通項として、桐島が出てくるだけだった。
でも、これはこれで、そうやってあえて、主人公(話者)を変えながら、ホンのちょっと桐島に触れつつ、話を進めていくっていう構成はなかなか斬新で面白かった。
それと今の高校生が抱える問題というか、揺れみたいなのが、びしびしと伝わってきたし。
ただ、思ったほど、「今」だけ特別というのではなく、自分が高校生のころもこんな感じだったなーという思いがあり、それほど時代が変わってないのかなと思った。
携帯やパソコンは普及したけど、基本の人間関係をめぐる軋轢はあんまり変化ないかもね。
クラスのなかの階級差、みたいなものも。
で、終盤にさしかかって、ヒロキという青年の章が一番、響いたな。解説を読むと、吉田大八監督が書いてるんだけど、この最終章のクライマックスの部分を映画として広げた、ということ。
文章のなかにでてくる、「ひかり」を映像化しようと思ったこと。
おお。
そして確かに、この「ひかり」が映画のなかでは見事に映像化されていた。
このラストシーンの「ひかり」を映像化するために、逆算してシナリオ作ったんじゃないかって思えるほど。
なので、映画と小説、両方読むとすごく楽しめると思う。
どちらも独立して面白いし、原作ものを映像化する立場にあるひとにとっては、すごく参考になるから。
つよい原作を映像化する時、大切なのは、もしかして、その小説のなかの、一番の「ひかり」みたいなところをとらえることで、(あらすじやキャラクター造型とかより)、そのことのほうが、ぐっと原作を生かすことになるんじゃないか、と思った。
自分も今度、原作ものやる機会があったら、そういう目線で本を読んでみよと思いました。