ここのところずっと、「homeland」(アメリカの人気テレビドラマ)を続けざまに見ていた。
主人公はCIAのエージェントで、キャリー・マディソンという30歳前後の女性。
キャリーといえば、「SEX & THE CITY」の主人公もキャリーだった。
(こっちは、キャリー・ブラッドショー)
2000年代のキャリーは仕事しつつも、恋愛と結婚にゆれていたけど、10年代のキャリーは、仕事最優先というか、まず、「双極性障害」という精神的な病を持っているし、職場もCIAという、国を背負うたいへんなお仕事だ。
しかも、homelandのキャリーは、アル中気味で、酔った勢いでその日に出会った人と一夜をともにしてしまう,やばい女性。いわゆるメンヘラちゃんで、やりまん…ともいえる。
satcのキャリーも男性関係は奔放だったし、友人のサマンサはたぶん、テレビドラマ史に残る、肯定的やりまんで、そこらへんが新しく、衝撃的だったからこそ、大ヒットしたという事情もちょっとはあると思う。
テレビにしろ映画にしろ小説にしろ、エンタメのなかでは、ドンファンみたいな、多数の女と関係しまくる男はずっと肯定的に描かれていて、主人公になれた。
(007のひととか、まあ、いちいちあげなくても山ほどいる)
一方、女でやりまんだったら、絶対主人公にはなれなかった。(日本のエンタメ界は今でもかなり厳しい)
脇のキャラとしては存在できでも、たいてい不幸になるか、ひどい目にあう象徴としてしか存在できなかった。
それを思うと、homelandのキャリーはすごい。
遠くまで来たなー、と思う。
キャリー(@homeland)はメンヘラでやりまんだけど、仕事はすごーくできる。そこらへんのCIAのオヤジたちより、ずっと頭が良くてクールで、直感がすぐれてて、テロからアメリカ守っちゃって、ものすごくたくさんの人の命を救ってる。
そういうキャラが描かれることが可能になって、しかもヒットする=多くのひとから受け入れられる、というのはすごい変化だ。(進化か?)
これってやっぱり、見る側の変化でもあるよね。
かつては、主人公がやりまんだと、まず男性たちから圧倒的に嫌われ、女性もNO!というひとが多かった。
けど、徐々に変わりだした。
そういうのもアリだよねーって共感が得られるようになったのだ。よくぞ、ここまで来た。
と、ジェンダーっぽいことを書いてしまったけど、そんなことばかり考えて見ているのではなかった。これはあくまで、ちょっと気になっただけ。
もっと気になったことは、物語を成立させるための事件とリアリティとの問題についてでした。
HOMELAND、超絶、よくできた脚本なんですけど、シーズン3まで来ると、「物語を続けること」がメインテーマになってきて、リアリティを相当越えてしまう。
ここらへん、映画やドラマを作る時に、悩むポイントだよね。
(少なくとも自分にとってはそう)
ハリウッドの脚本の教科書にも、「主人公をとことん、追い込め、困らせろ」ってあるけど、主人公は次々と難題をつきつけられないといけない。
ひとつ解決するとまたひとつ…、という風に重ねていかないと、お客さんが飽きてしまうからだ。
お客さんは、主人公が問題に直面し、苦悩し、乗り越える過程を見るのが好きなんだ。
なので、事件は次々と起こり、恋人たちは結ばれず、平和はやってこない。
HOMELANDもハリウッドの教科書通り、次々と事件が起こり、キャリーは決して幸せになれない。
(SATCのキャリーがいろんな男に出会うけど、結婚できず、幸せになれないのと構造は同じ)
おかげでこっちは一睡もせずに、せっせとアマゾンビデオを購入して、シーズン3一気に見てしまうわけですが(いいお客さん)、それでも、ふっと立ち止まる。
これって、物語のための物語だよねー。
もちろん、見ている間中、わくわくして、次はどうなる?と思わせ、あー面白かった!と幕を閉じるのを目的とするのもアリだと思う。
ジェットコースターに乗るようなものだ。
けど、時々、迷う。それでいいのかしら、と。
新しいなにかに出会ったり、世界が違ってみえてくる視点を手に入れたり、そういうのがなくていいのか、とか、思ってしまう。
いや、HOMELANDはいろいろ新しい視点なので、(主人公のキャラ設定からして)、すごいとは思うのだけど、「キャッチー」であることに振り回されたくない…と思う。
キャッチーであることは、テーマの本質とずれることがままある。
多くのひとを惹きつけるためには、多少大げさに言ったりしないといけないから。
そのせいで、本質がぼやけてしまったりもする。
まあ、ジェットコースターに乗せていながら、本質もぐいっと見せられればいいんだけど。
そういうことも含めて、翻弄されながら、見ていた。
シーズン4を心待ちにしているのだった…。
HOMELAND
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