山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

電車のなかで化粧を直す彼女へ。



カナは、いないな、と思うと、玄関で寝ていることが多い。冷たい床が気持ちいいらしい。

今日は、夕方から、時々参加する番組の宴会へでかける。おい、そんなことをしている場合なのかという状況なんですが、でもさー、人混みが恋しくなって。久しぶりに地下鉄に乗ると、前に座っている女子が化粧を直している。パフでファンデーションを整え、色鮮やかなアイシャドーをのせている。暇なのでずっと見てる。よく、電車で化粧する女はいかん!という話を聞く。でも、どうしていけないのかなーと思ったりする。

今日の彼女だって、これからたぶん、デートか夜遊びに出かける予定で、でも、ギリギリまで仕事で化粧を直している暇もなかったのかもしれない。だから、地下鉄のなかでさっと化粧を直す。そんなに不快な行動でもないし、目の敵にしなくたっていいのになあと思う。

もちろん、ものすごくきつい香水を振りまくとか、まわりに粉を飛び散らせるなどであったら、あってはいけないことだと思うけど、手鏡に映る範囲で顔を直したって、誰に迷惑かけるわけでなし、と思うのだが。

そんなことを言い出したら、車内でエロ記事のある新聞や雑誌を読んでいるやつらのがもっと不快だわ。けど、それでさえ、ことさらにそのページを強調しないなら、いいじゃないかと思う。東京は狭すぎ、忙しすぎ、混み合いすぎている。だから、まわりに少しくらいわがままを許してあげてもいいように思う。お互いさまとして。

車内で化粧を直す彼女を見てたら、これから会う誰かのために少しでもきれいに見えるように、必死なのだわと思えて、むしろほほえましかった。地下鉄は渋谷に向かっており、きっと彼女の会いたいひとは渋谷にいるのだ。金曜の夜だもの。かつて自分もそういう気持ちで誰かに会いに急いでいたのだ。

大丈夫、きれいになったよ、安心して好きなひとのところへ走れ。彼女にそう言ってあげたかった。そんな夜。