山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

せつない夜。

今日は、ディレクターズワークショップに行ってきた。

最初の部が、石岡正人監督で、次の部が廣木隆一監督の担当だった。

石岡さんのデビュー作「PAIN」はとても優れた映画だし、人柄的にも魅力的な方なので、見学できるのを楽しみにしていた。(が、起きられなくて遅れて行きました。すみません)。でも、ていねいに演出する姿や登場人物のキャラクター設定に対する試みが見られて、面白かったし、ためになった。

2時間の休憩をはさんで、ベテランであり、女性に人気の高い廣木監督。受講生は20名近くいて、大盛況だった。用意された台本の出演者は男女各二名、4つくらいのユニットを作って、それぞれが演じていく。いや~これも面白かったなー。

自分はテレビドラマの演出しかやってきていないので、ひとつの役をいろんなひとにやらせてみる…という経験がない。やってみたいけど、そんなこと、やってる時間、たいていないから。まあ、オーディションで少しやることもあるけど、いや、でも、全然ちがうか。

同じ脚本でも、演じ方、演じるひとによって、まったく違う物語になるんだな…ということをあらためて思った。最近は、演出より脚本のほうが多かったので、両方の意味で勉強になったなー。

同じセリフでもかっこいい男がいうのと、イケてない奴が言うのでは意味がちがってくるし、芝居のつけかたで、いかようにも変わるのであった。あるいは、監督がそういう脚本を用意したのかもしれない。しかし、自分だったら(自分が役者の立場だったら)、このひとはどういうひとなのか?などと細かく質問してまうところ。背景がわからないと演じられないなーと思うから。脚本に書かれていない歴史や心情を事前に聞いておきたくなる。しかし、そういう質問をするひとはいなかった。

聞いたら怒られる、と思っていたのかな。そして、実際、聞いたら「そんなこと、自分で想像しろ」って言われるのだろうか。

自分は脚本を書く時点で、かなり細かい部分までそのひとの背景を想像している。ホンにない部分までできている場合が多い。(コメディや短いものはそうでもないか…)。なので、背景を説明してほし、どんなひとなのかもっと教えてほしいと言われたら、どんどんしゃべってしまう…と思う。

脚本の教科書によく書いてあることだけど、主人公の一ヶ月前、三ヶ月前、半年前、一年前…という具合に過去まで想像して、キャラクター表を書けるようにしろと。そうだと思う。そういう背景がないとキャラってつくれないし。しかし、カンのいい役者さんは、そんなことをしなくても、ホンから読み取って、やってしまうことも多いかな。知りすぎる不幸もあるのかもしれない。

そんなわけで、いろんな芝居が見られて楽しかった。勉強になったなー。

ひとは演出でどこまで変われるのだろうか。まったく違う人格に演出でもっていくことってできるのかな。舞台のひとたちはそうやっているのでしょうか。ううむ。自分は自分のイメージにあったひとをキャスティングした時点で8~9割り方芝居が決まってしまうように思う。自分によって変えられる部分なんて、ごく少し…と思ってしまっている。ホントはそうあるべきじゃないのかな…。

あと、まったく演出とは関係ない部分で、なんともせつない気持ちになりました。役者になりたくて、勉強に来ているのだな、このひとたちは…ということに打たれたのである。夏の初めの日曜日、雨とはいえ、お金を払って芝居をならいにくる…この道で生きていける可能性は、(残酷だけど)とても少ない。いや、もちろん、副業をもちながら役者をやり続けるという方法はある。そういう俳優さんたちをたくさん知っている。

けれども、ほとんどのひとがそういう状態に耐えられなくなり、いつか普通の暮らしを選んでいく。芝居でご飯を食べていけるひとというのは、ほんとに少数なんだよね。でも、その道に向かって、今日も歩き出すひとがいるんだな…ということに心打たれるのである。その心意気と一歩に。

できれば、みんなが思うような芝居ができるようになり、芝居だけで食べていけるようになったらいいね…と思う。思うけど、そこまで。私は誰も救えないし、それぞれの力でやるしかないもんね。その意味では、年長である自分も同じ場所にいるんだよね。とりあえず演出業と書き物で食べていけていますが、それでヨシってわけじゃないんで。

そんなわけで、今年後半は、少し演出業に舞い戻り、いろいろやってみるもんね。以前、テレビドラマを撮っていた頃より、突き抜けた感じがする。態度が定まった気分なんですが…。どうかな。

あ、来週の日曜日は、自分がここでワークショップをやります。まだ、申し込み間に合うので、ぜひ、来てくださいね。

実際に、撮る予定のドラマと映画のワンシーンをやるつもりです。