山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

本谷有希子さんの舞台

今日は、渋谷パルコ劇場で「幸せ最高ありがとうマジで!」(本谷有希子・作演出)という舞台を見てきました。主演は、今をときめく永作博美さん!

いや~しびれました。泣くシーンじゃないのに、気づかないうちに涙が流れていた。すげえなー本谷さん。この人レベルの脚本や小説書けないひとは、全員消えろ!と言われたら、私、消える。いくらでも道を空ける。

とにかく目が離せなかった。そして、本谷さんが言おうとしていることが、強烈な勢いで輪郭を持ってくる瞬間に、非常にざわざわした。え、どこまで言うの?どこまで書くの?…という気持ちだ。

「企画会議の様子」も「想像される結末」もない。すごい。

(以下、ネタバレありなので、これからご覧になる方は読まないほうがいいです。…が、私の書くあらすじもとらえ方もちがっている可能性もあるから、それほどの邪魔にはならないかもしれないけど)

さっとあらすじを言うと、路地のどんつきにある、ごく普通の新聞配達店に、突然、「店主の愛人です」という女が現れる。これが永作さん演じる女。彼女は、実は、店主と会ったこともないのだが、無差別テロのように、その家族を壊すことを目的に、「愛人です」という嘘をつく。

彼女のついた「嘘」によって、この新聞配達店の家族(店主の男、その妻、娘と息子、住み込みの女性従業員)の抱えてた「嘘」があらわになっていく。店主は、過去に住み込みの女をレイプしたことがある。しかし、その後、彼女は店主の愛人になっている。妻はそれを住み込みの部屋に盗聴マイクを仕込むことにより、全部知っている。知っていて、無視している。娘と息子は、親が再婚同士のため、血のつながりはない。が、近親相姦めいた関係にある。

これらのことが、にせの愛人の出現によって、どんどんあらわになっていく。こう書くと、「崩壊家族もの」と思われるけど、ま、そうだけど、その手法が斬新。住み込みの従業員は、レイプされた事実と現在愛人である自分の状態に悩み、リストカットの常習者である。その彼女に向かって、「リスカもう、はやらないよ」と言ってのける。

「精神病んでいます」と宣言するひとの多さをあざ笑い、理由がなくても、人格が壊れているという自分(=永作演じる謎の女)を「明るい人格障害」と呼び、新聞に「絶望」と書き加えろ!と語る。
そう、この店のひとたちは、ずっと前から絶望していたのだ。これをいいあてたあと、永作演じる女性は、灯油をまいて、家を焼こうとする。

その姿を見て、従業員の女がいう。「あなたこそ、私たちの希望です」

ううう。ここで泣きましたよ。そうか、そうだったのか。

一億人そう、うつ病状態の今、息苦しさは増し、どこに抜け道があるの?という状態のなか、ひとつの解決の方法、あるいは、光みたいなものを、この芝居に見た気がした。

付け加えると、ノリに載っている永作さんの芝居がまた、すごい。まわりの4人もすっごいけどねー。
脱帽です。