山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

丸善さん、ありがとう。

今日は、新宿に行ってきました。

目的地は、新宿駅から高層ビル街へ向かう途中にある、「丸善エステック店」さん。



なんで、こちらのお店に?…というと、文学の棚のところに…見覚えのあるポスターが…。



ぐっと近づいてみると、自分の本のコーナーなんです。



映画の新宿での上映はそろそろ終わってしまうというのに、「すべては海になる」のポスターが貼ってあり、その下には、これまで自分が出した本、「ベイビーシャワー」から始まって小学館の3冊、徳間書店の「まじめなわたしの不まじめな愛情」、講談社の「もしも、この世に天使が。」シリーズの2冊…などが、こじんまりとかわいく並べられています。

いや~ごっつ、ありがたいです。たまたま、知りあった丸善の本社の方が、「よっしゃ!」という熱いお心で、わたくしのミニコーナーを作ってくださいました。うれしいです。ありがたいです。涙です。この不況時、血も涙もないと言われた(言われてないか…)都会の片隅で(…新宿は片隅というより、中心ではありますが…)、こんなふうに、自分の本だけ、並べてもらえるなんて、穴があったら入りたい…ではなく、穴からすぐに飛び出たいような、気持ちです。ほんと、感謝です。

もしも、都庁へ至るあの通路を歩くことがありましたら、ちらっと寄り道してみてくださいね。それで、見て来てくださいね。もちろん、購入してもらえたら嬉しいし、自分の本じゃなくても、買ってください。丸善さんが儲かったらありがたいですもの。

丸善詣でのあとは、新宿ピカデリーでスペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督の「抱擁のかけら」を見ました。

目の見えなくなった映画監督が主人公のお話です。目の見えない映画監督……なんて残酷な設定でしょう。

耳の聞こえない音楽家、味のわからない料理人、走れないマラソンランナー…みたいなものでしょう。要するに、「おしまい」。

映画は、なぜ、この監督が視力を失ったのか…そして、視力とともに失ったものはなにか…を過去に戻りつつ描いていきます。

彼の失われた恋人を、ペネロペ・クロスが演じています。妖艶な超美人!です。で、まあ、すべりだしは、さすがアルモドバル!という感じで始まるのですが、物語が進むにつて、えっ?って気分になっていきます。いろんなサスペンス要素を振りまきながらも、案外、シンプルな結末へ…。

これが、あのアルモドバルなの?ってくらい、普通。結論はありがちなメロドラマです。ちょっとがっかり。ラブストーリーとしては、とても普通。ものすごい美人にめちゃ恋をした男の物語ってことですけど、ただ、じんときたのは、主人公が映画監督だったこと。彼は、主演女優(ペネロペ演じる)に恋をしていき、そのことで、女優の愛人から憎まれ、転落していくわけです。で、その映画も失敗しちゃう。なぜなら、編集権を取り上げられるから…。

撮影はしたけど、編集権を取り上げられる…、ハリウッドや一部の日本映画でもそのような残酷な事態が起こっていることは知っています。自分はそういう経験はないけど、(まあ、映画は1本しか撮ってないし…)、でも、テレビの場合、編集権を奪われそうになったり、「変更しろ!」と怒声をあびせられたりすることは結構あります。まあ、仕事なんでしょうがないんですけど。

で、問題はここからです。(これをネタばれと思うひとは、どーぞ読まないでね)

編集権を取り上げられたことで、飛んでもない駄作ができるわけです。で、当然映画はヒットせず終わる。ところが、視力を失ったあと、もう一度編集し直すんですよ。そしたら、傑作ができる…という展開になっています。

物語としては、感動的です。視力を失い、愛を失ったけど、もう一度やり直せる!(編集しなおしたら傑作に!)ってことなんです。

でも、ですよ、編集だけで、駄作が傑作になるのかなあ。ホントに?

そこが一番ひっかかった。そういうところにひっかかるのは、映像の仕事をしているひとだけだと思うので、一般の方には興味のない部分だと思いますが、自分には、そこが一番、ひっかかった。失われた愛とか、嫉妬とか…そっちのテーマは、割とどーでもいいと思いました。(描き方も普通だったし…)。

一度できあがった料理を、味付けしなおしたら、絶品になった!みたいなことでしょうか。まずい料理でも、味をつけ直して、美味しくすることはある程度はできると思います。でも、傑作にはならないのではないか。そんなに簡単にいくのかなあ…と。

もしも、編集しなおして、傑作なら、多分、いい加減につないでも、それなりの作品になっていたはずじゃないのかなあ。これがとても腑に落ちなかった。映画としては、上質の2時間サスペンスドラマみたいでした。

巨匠もいつも傑作というわけにはいかないのだな…ちょっとホッとしつつ、やはり、傑作に出会えたほうが、生きる力をもらえるので、そっちがいいと思いました。

また、長くなってしまった。