山田あかねの一喜一憂日記

テレビディレクターをやりながら、小説書いてます。映画も撮りました。脚本なども書いてます。 本、買って下さいね。

本と書店の未来、その2



今日も、横浜、黄金町のシックな映画館、「ジャック&ベティ」に行ってきました。

写真は、劇場近くの川沿いの道。近所の商店街といい、川沿いの道といい、独特の雰囲気のある街です。にぎやかな商店街のある通りから、川を隔てた地域は、昔は、遊郭が並んでいたといいます。

今でも、小さな間口の店が並んでいて、当時のことを、少しだけ、しのぶことができます。

川をはさんで、遊郭と日常の街がある。

あの橋を渡ったら、別の世界が広がっている…そんなふうに、両岸のひとは思っていたんじゃないか。遊女は、橋の向こう側の暮らしをどんな気持ちで見ていたのかな、日常から抜け出して、橋を渡り、遊女に会いに行く男たちは、どんな気分だったのかな、そんなことを思いながら、橋を渡って、映画館へ行きました。

(黄金町の駅は、元・遊郭地域側にあるんです)。

今日のゲストは、「読書のすすめ」という書店の店長、清水克衛(かつよし)さん。


トーク中の写真を今日は、撮ってもらうのを、失念しました。しっかし、清水さんのお話は面白かったー。

というか、まったく新しいかたちの本屋さんを実践しているんだなと思いました。

「新しい」といっても、根っこのところにあるものは、非常に普遍的で、ひとが昔から求めてきたものなんじゃないか…でも、それを新しく感じるってことは、どっかで、本屋さんを取り巻く環境が変わりすぎてしまったんじゃないか…そんなことを考えました。

清水さんは、店を訪れるお客さんと話をして、そのお客さんに本を選んであげる…という、とてもシンプルなことから始められたそうです。

「八百屋さんが、お客さんに対して、今日は、このリンゴが美味しいよ、というようなもんなんです」

と言ってらしたけど、いわゆる、文芸評論家、批評家の立場ではなく、「これ、美味しいから食べて見て」と気軽にリンゴを勧めるみたいに、本を勧める。本屋さんの原点のような気がする。そういう形のお店が、昔は…という言葉が曖昧なら、昭和の時代には、どこの街にもあったような気がする。けど、今は、みんな画一化してしまった。

自分が本屋さんにあまり行かなくなった最大の理由は、「今週のベストセラー」とか、出版社からおすすめの平積みとか、数による評価が全面に出始めてからだと思う。数を売ったものが一番正しい…という基準の勢いに、いたたまれなくなるのだった。

どうやら、清水さんの本屋さんは、そういう本屋さんではないらしい。今、一番売れている某小説は、おいていないと言っていた。その代わり、ビールがあったり、お客さんが、くつろぐソファがあったり、いろんなひとが、いろんなものを求めてやってこれる、「空間」があるらしい。

自分も中学・高校のときは、学校帰りによく本屋さんに寄った。特に買う本がなくても、ぶらぶらと本棚の間を歩いているだけで楽しかったし、ひとりでいても、誰にも不審に思われない、居心地のいい場所だったのだ。東京の女子高生はひとりでいるといろいろ面倒が多かったけど、本屋は聖域でした。そこでは、好きなだけ、ただひとりでいることができた。そして、目に付いた本を手にとって、読んだり、読まなかったり。時々は買って帰る…そういう場所だった。

そんなことを思い出しながら、清水さんのお話をうかがいました。たまたま、日本映画学校の学生さんが、取材に来ていて、トークのあと、

出版不況について、どう思いますか。書店の未来はどうなると思いますか」

と聞かれたけど、自分はあんまり心配していないと答えた。

たとえば、車が売れなくなっているという。でも、「ひとが移動する」こと自体はなくなっていない。それと同じで、今のかたちの出版がそのまま維持されないかもしれないけど、ひとが、物語やノンフィクションなど「書かれた物」を求める気持ちは決して、なくならない。現実に、WEB上で、文字を読み、メールやブログやツイッターで文字を書くひとは、圧倒的に増えている。「読み書き」するひとは、飛躍的に増えているのだ。

その形は変わるかもしれないけど、物語を書くこと、作ることは人間以外に誰もできないから、それはどんなに技術が進んでもとって変わられることはないと思っている。

同じように、清水さんがやっているようなこと、ひとと話し、そのひとのために本を選ぶ…ということは、「ひと」以外にできないので、その需要もなくならない、むしろ、もっと求められると思う。

そういう気持ちを強くした日曜日でした。

映画は、21日(金)まで、やっています。19日(水)には、作家阿川大樹さんとのトークもあります。今日、阿川さんと相談して、19日のテーマは、

「40歳を過ぎてから、作家になる方法」

にしようと思っています。人生の半ばを過ぎてからでも、やりたいことを実現する方法を、ふたりで話したいと思います。

私も、最初の本が出たのは、40歳を過ぎてからでした。映画も撮れたし、世間的な成功はおさめておりませんが、自分がやりたいなーと思ったことは、とりあえず、一通りできている気がするので、そこらへんについて、東大→夢の遊民社→一流企業のサラリーマンという華々しい経歴を持ちながら、40歳すぎて、作家に転身した阿川さんと、じっくりお話しようと思っています。