村上隆さんの「芸術闘争論」を読んで、考えこんでしまうことが多かったので、少し。
村上さんは、現代ARTの作家です。現代美術のなかにアニメやフィギュアを取り込んだ作品で、名を馳せ、ルイ・ヴィトンとコラボレーションしたり、最近だと、ベルサイユ宮殿で個展を行ったりと、海外での評価の高い、アーティストです。
自分、美術界にはうといのですが、ちょっと関心があって、読んで見ました。
村上さんの言っていることは、現代アートだけじゃなくて、あらゆる芸術分野…映画でも小説でも…が抱えている問題だなあと思いました。
「好きなことだけやる」「やりたいことしかやらない」…という態度は、ダメだといいます。芸術もまた、資本主義社会のなかで、そのプレーヤーたちが望むものをやっていくべき、と書かれています。
社会のルールを読み込んで、なにが望まれているかを理解して、表現していけ…と。彼が一番、ダメだというのが、私小説みたいな作品。表現とは、「自己表現」ではないと、繰り返し語られる。
自由になるために、作品を作る…という態度はダメと言い切ります。
そして、日本が「芸術」に長らくもってきたイメージ、芸術=貧乏=正義から脱却せよと。
世界で認められるために戦略を練り、努力して実践せよと。
おいしいラーメン屋にレシピがあるように、みんなに受けるレシピを考えよと。そうすれば、自由になれるかどうかはわからないけど、オノ・ヨーコや草間弥生のようなアーティストになれると仰っています。
そのためのハウツーをまるで、ビジネス本、成功指南本みたいに、列挙していきます。
なんだかわからない熱情をキャンバスにぶつける…とか、己の業を昇華するために絵筆を持つとか…そういう、狂気じみた「芸術家」のイメージを全部、払拭するような提言です。
クールに計画をたて、準備し、もちろん、制作は必死でやるけど、思いのままに描くのではなく、ルールに従って描け…と。
自分のブランディングをせよ…と。
(自分をブランドにするってことですね。キャッチフレーズをつけるように)
彼が例証にあげるのは、「IQ83」でベストセラーになった村上春樹さんや、宮崎駿さんやAKB48です。
びっくりの連続でした。もちろん、一理も二理もあると思います。
同じことを、海外の映画祭で高い評価を得ている監督から聞いたことがあります。まず、海外で日本の監督として受けるには、どんなテーマがいいか…を考えるということ。自分がなにがやりたいか…ではなく、なにが求められているかを先に考えるって言ってました。
その時は、そういうものかなあと思っていたけど、海外の映画祭に行って、ちょっとわかったような気がします。もはや、富士山ゲイシャではないけど、「日本らしさ」「エキゾチック」を演出したほうが、受けるってことは確かでした。
そして、実際、村上さんは成功されているわけです。
「やりたいことだけやる」は、ダメなんだ-。とほほ。
しかし、現在、芥川賞をとった大・私小説「苦役列車」はベストセラー邁進中ですよね。そうか、私小説作家というブランディングに成功したパターンでしょうか。
とにかく、ここまで、明言されると、あっぱれなほどでした。
自分もブランディングとか、考えないといけないのでしょうね。