山田あかねの一喜一憂日記

テレビディレクターをやりながら、小説書いてます。映画も撮りました。脚本なども書いてます。 本、買って下さいね。

エキストラ体験

思うところあって…というか、一度やってみたくて、「エキストラ募集」に応募してみた。

なんというか、ひとの現場に行ってみたい…というのがひとつ。

ほかの監督が作って行く様子を見たい…というか。

そして、もうひとつは、「演じる」ってことをちょっとやってみたかった。

もちろん、これまでもいろんな現場に行ったことはある。

知り合いの撮影現場や、メイキングを撮りに行ったこともあった。

あるいは、自分が脚本、書いた現場とかね。

けど、知り合いの場合だと、あんまりジロジロみているのは気が引けるし、だいたい、たいへんなシーンのときは邪魔なのはわかっているし、メイキングだと、こっちも仕事しないといけないので、見てばかりもいられないのだ。

だから見ているようでいて、じっくり見ていない。

というのも、ハリウッドの演劇学校に行って以来、「ひとの演出法を見たい」という思いにかられていたのだ。

よほど、この時期、撮影している知り合いを訪ねようかと思った。

けれども、そういうのって迷惑でしょう。

逆の立場になって考えてみる。

あんまり同業者に見られたくないよね。って思いはある。

それに、誰かくるってことになったら、助監督さんとか制作部さんと連絡とらないといけないから、ただでさえ、忙しいひとたちに余計な仕事を増やすことになる。

そういうのもどうかと思って、ネットで募集していたエキストラ募集に応募してみた。

連絡がなかなかこなかったから、「やっぱり、落選か…」と思っていたら、撮影2日前くらいにメールが来た。

わー結構、ギリギリなんだなーとまず驚く。

そして、同時に怖くなる。ホントに私なんかが行っていいのかしら…。大丈夫かしら。できるかしら…などなど。

しかし、申し込んでおきながら、前日キャンセルされたら、スタッフも困るだろうし、第一、せっかくのチャンスだ、勇気を振り絞って行ってみた。

ここで注釈を書いておきますと、たいていのエキストラは、その作品に対する守秘義務みたいなものがあって、現場で知り得たことを発表してはいけないことになっている。なので、もちろん、具体的な作品名、監督名は書きません。

あくまで、私個人の心象風景と体験記としてお読みください。

…というわけで、早起きして…というか、2時間くらいしか寝れずに出発。朝ご飯はでないと知らされていたので、電車のなかで、バナナなどを食べる。

撮影現場は、在来線で行くと軽く2時間半くらいかかる。一時は現場近くに泊まろうとかと思ったけど、特急などに乗れば、1時間ちょっとで行けることがわかり、そっちにした。

電車のなか、寝てないこともあって、緊張、緊張。

ある意味、自分が演出に行くより緊張する。どっか、「なにやってんだ?自分」という思いがある。

そんなこんなで、ビビりながら、集合場所に到着。

これが意外だった。自分の予想ではもっとわんさかエキストラのひとがいると思っていたのだが、思ったよりずっと少ない。

これで、緊張がさらに高まる。

「おおぜいのなかのひとり」なら大丈夫だろうと思っていたら、こんなに少人数なんて、やばくないか…?

すると、助監督さん(もしくはエキストラ担当)がやってきて、移動となる。どうやら、ほかにもエキストラはいるようだ。

撮影現場につくと、ほっとした。たくさんのエキストラさん…100人弱が集まっている。

おー安心。これなら、数にまぎれることができる。

と思いつつも、万が一、スタッフに知り合いがいたらどうしようと、初めて気づく。

が、まあ、その時はその時だ、正直に「見たかったから」と言えばよい。そう覚悟を決めるが、伏し目がちで歩いたことは告白しておく。

監督やカメラマンを遠巻きにちらちら見ながら、エキストラの控え室に入る。

そこで、助監督(もしくはエキストラ担当者)の説明を聞く。

ここで初めて、自分が演じる役の内容を知る。といっても、非常にざっくりした説明なので、「へーこれくらいの説明でやるもんなんだ」と驚く。

脚本ももらえないし…まあ、当然なのか…、作品全体の流れもわからない。

そんなんで、「演じる」ことなんてできるのだろうか…とちと不安になる。

が、まわりを見渡すと、ベテランエキストラさんたちがたくさんいて、余裕な感じである。

こういうときは先輩方に従おうと、おとなしくしている。

それからは、「待ち」。

そうか、そうだよなあ、俳優さんたちって「待つ」んだよなーとしみじみ思う。

自分は撮る側だから、「待ち」なんてない。いつも追いかけられるような気持ちでやってる。

けど、待つ側にしてみたら、「なに、やってんだよー」と思うのかもしれないなーと思う。

とにかく、暇。まわりのおしゃべりに耳を傾けつつ、途中からは寝てしまった。

爆睡してたら、出番が来た。半睡状態のまま、現場へ。

うー眠いし、頭、ぼーっとしてたら、メイクさんに髪を直された。

そうか、寝てたまま、来ちゃったから、ボサボサだったのね、失礼。

髪をきりっと結んでもらって、少し目が覚める。

で、助監督さんの説明。そうか、エキストラに芝居つけるのって、監督じゃないもんね。そうかー。

監督が芝居つけるところ、見たかったなーと思って、監督を探すけど、見当たらない。

エキストラの大群のなかからは、遠すぎて見えない。おう、残念。

で、肝心の自分の役柄(…といっても、群衆のなかの人なので、役柄というほどのものでもない)に徹してみようと考える。

が、思ったほど、説明がないので、細かい部分がわからない。周りを見ると、みなさん、それぞれの芝居をする意気込みである。

そうか、これくらいの説明で、これくらいの準備時間でなにかしないといけないんだな、そうか、かなり即興性の求められる仕事なんだなーなどと思う。

でも、自分なりにやってみようと、目をつぶり、そういう役柄を想像し、やり過ぎない範囲でトライする。すぐにテスト、で、直して本番…とにかく、テンポが早い。

うー、自分の芝居、これでいいのかしら…とか思ってるけど、とりたてて注意もされないから、セーフだろうと思って、トライ。

そんなふうにして、炎天下のもと、撮影。

待ちの間、役者さんには日傘と飲み物が配られるけど、エキストラにはなし。その場を動いてもいけない。

あー過酷なんだと思う。

勝手に飲み物とりにいこうかと思ったけど、そんなことをするひとはひとりもいないので、やめておく。

そうだ、エキストラのひとがどんどん勝手に動いたら、スタッフは困るだろう。このように、ちゃんとじっと待っててくれる方がいるから現場がスムースに進むのだ。

それを自ら壊してはいけない。

エキストラさんはいろんなひとがいる。定年退職後に趣味でやっているひと、芝居が好きなヒト、エキストラ常連のひと、などなどとても興味深い。

だんだんなじんできて、撮影を楽しむ余裕も出てくる。

一応、自分も演出をやってきたので、撮りたいカットはだいたいわかる。

こっちから撮ったら、次はあっちだな…、なるほど、アップを入れて、逆打ち行くのね…などと思う。

そうだ、監督を見なくっちゃ…と思い、目で探す。

この現場は監督補らしきひとと、助監督がほとんど仕切っていて、監督はあんまり全面に出てこない。カメラマンとは全く話さない。

モニターを見たり、時々、様子を見に来るくらい。

そうか、そういう感じなんだー、と思う。

それでも、途中、ちょっとした芝居の説明をしに、監督がやってきた。非常に短い言葉でわかりやすく意図を説明して戻って行った。

なるほど。

逆の立場からはこのように見えているんだなーと思えて、面白い。

でも、こちらにも仕事があるんだから、いい気になって観察してたら失礼だから、群衆の役をがんばる。で、しみじみ、演じるって難しいなーと思う。

よくも偉そうに、「次はこうして…」とか「全然ちがう」とか言ってきたもんだと思う。

監督でも、芝居のうまい人もいる。そういうひとはやってみせるけど、自分は苦手です。歌も踊りもできません。うー。

でも、今回エキストラ参加した監督さんも、そっちタイプ。自分で演じてみせたりしなかった。

そんな感じで2シーンくらいに出演して、控え室に戻ってきた。

またまた、待ち時間。

この待ち時間を利用してこそ、遠巻きに見学に行くべきであった。そうしているひともいた。

が。

何しろ、眠くて眠くて、ずっと寝てたよー。

バカか、おまえは。

2時間くらい熟睡して、やっと目が覚めて、夕方からちらちらと見に行く。

ここでも監督補もしくは助監督さん大活躍で、監督さんはどっしり構えている感じ。

ふうむ。

勝手な印象では、「ものすごく怖い感じのひと」だと思っていて、もっと怒鳴り散らしたりするのかと思っていたら、そんなことは一度もなかった。

エキストラが入るときに、ひとりひとりに「おはようございます」とちゃんと挨拶していたし、終わったあとは、深々と「ありがとうございました」と頭を下げていた。

わーなんか、いいひと。自分の作品にまじめなひと…と思い、好印象にかわる。

やっぱり挨拶は大事だ。…っていうか、心がこもっているかどうかが通じてしまうような気がした。

そんなわけで、帰りは疲労でヨレヨレになりましたが、とても勉強になった。行ってよかったと思った。

そして、もうひとつ知ったことは、どれほど集団行動が苦手かってこと。

一カ所に集められたり、席を決められたりするのがとてもしんどい。自分勝手に動けないことが、こんなに苦痛だとは。

以前、ヨーロッパにツアーで行ったことがあって、その時と同じ苦しみを感じた。ご飯とかなにからなにまで決められると、とても苦しい。

一カ所にじっとしていられない。

(これは小学校の頃からだし、よく授業中に歩き回って、先生に怒られた。)

そういう意味でも勉強になった。そして、エキストラのひとたちにどれだけ助けられているかも知った。

次に自分がやるときには、もう少し、詳しく説明などできたらいいな…と思った。

ちがう場所に身を置いてみること……これはほんと、とてもよい経験だと思いました。

芝居に自信があったら、もっとやってみたいなーと思いました。

(ちなみにエキストラに行ったのは、この夏のある一日であり、今日ではありません。)