山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

頭に銃をつきつけられて。

ロンドン35日目。

英語学校で知り合ったロシア人の話が面白い。

本当にロシアって、今、変わり目で、いろんなストレンジなことが起こっているらしい。

ロシア人の男性の平均寿命が57歳くらいだとか。

ウォトカの飲み過ぎによるものらしい。それと、ストレス。

若者の半分がドラッグをやっているとか、なにか事件が起きても、警察には行かないとか、

なぜなら、警察こそが、一番、恐ろしい犯罪組織だから…とか。

冗談で頭にピストルをつきつけられたりするとか。

これはポーランド人から聞いた話。

列車でロシアに行く途中、国境を越えたのに気づかずに本を読んでいたら、

「ちょっとお客さん」と鉄道警察の人(みたいなひとがいるらしい)に声をかけられた。

顔をあげると、頭に銃を突きつけられていたという。

まるで、ロシアンルーレットみたいに。

でも、そのポーランド人にとっては、「そんなの日常だし、冗談の範囲だし」と笑い、笑いながら、パスポートをみせたそうだ。

頭に銃をつきつけられたまま。

「本物の銃なの?」と確認すると、

そんなの別に驚くほどのことじゃない。撃ちはしないから…って笑うけど、そりゃあ、そうだろうけど…。

っていうか、本読んでいただけで、撃たれたら怖すぎるでしょ。

それ以外にもこんな話が。

モスクワの中心地の交通渋滞は異常らしく、通勤に7時間かかったことがあるって。

7時間?

私の英語力が足りないせいで、聞き間違えたのかと思ったけど、本当に7時間だって。

車で通勤していて、渋滞に巻き込まれて、7時間かかったって。

会社、終わっちゃうよね。

冗談なのかと思って、笑って、確認すると、まじめな顔で返されるので、さらに驚く。

本当に世界は広いのだ。

イギリス人の先生が、「私たちの国って、退屈だねえ」なんていうくらい、ロシアの今って、すごいことになっている。

秘密警察の話とか、なんの罪もないのに、政府関係者に「嫌われた」だけで、投獄されるとか。

もちろん、ミラン・クンデラの小説「冗談」もそういう話だった。

ハガキにほんの冗談で書いたつもりの「ひとこと」によって、仕事をはずされ、地方に飛ばされ、監視され、人生がまったく変わってしまう男の話だ。

クンデラはチェコの作家だけど、こういう出来事は日常であったらしい。というか、過去のことではなく、今もそういう可能性があるらしい。

ロシアでは、監獄に入ったことあるひとなんていっぱいいますよ…って。

世界は本当に広い。本当にいろんな人がいる。いろんな事件がある。

日本で平和につかって考えてる想像の幅をはるかに越える事件が起こっている。

クライムストーリーを想像力で書くより、ロシアで取材したほうがよさそうだ。

イギリス人の先生がチャーチルの言葉を引用していた。

デモクラシーは悪いところのたくさんある制度だけど、ほかのものに比べたら、いささかマシだ…って。

(ソ連や東欧のコミュニズムと比べたらって意味らしいけど)。

でも、ロシア人もポーランド人も、「デモクラシーを楽しんでますよ」って笑うから面白い。

変わって行く国って面白いなー。人間も面白いよね。すごく打たれ強い感じ。

いや、当事者はきっとすごくたいへんなんだと思うけどね。

ロンドンでこんなにロシアの話を聞くことになるとは…。