山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

映画「おとなのけんか」

日比谷でロマン・ポランスキー監督の「おとなのけんか」を見ました。

ジョディ・フォスターとケイト・ウインスレットという、ハリウッド二大演技派(もちろん、美形でもあるけど)女優に、どっかで見たことあるけど、すぐには名前の浮かばない男優2名と合計四人しかでてこない作品です。

一幕ものの舞台のよう…というか、もともと、大ヒット舞台の映画化でした。

すべてが会話で進行する会話劇ですから、とにかく、セリフが効いている。

それぞれのキャラクターをうまく象徴するようなセリフがぽんぽんでてきます。

映像で見せるのではなく、セリフ中心ですね。

脚本も書く身である自分にとっては、ありがたい作品です。

もし、監督をふたつに分けるとしたら、自分は圧倒的にセリフ派。

もう一派は主流である映像派。

あ、芝居派というのもいるから、3つかな。
(ようするに何に一番こだわるかって意味です)

話を「おとなのけんか」に戻します。

誰も死ななければ、殺されもせず、背景も変わらず、とにかく、大人四人のやりとりだけで見せていくという脚本家の力と俳優の力が一番、求められる作品です。

いや、もちろん、監督の力も必要でしょうけれども、こういうのはやっぱり、脚本と演技ですよねー。

そういう意味で、演技合戦でもあります。

まず、ケイト・ウインスレットの夫、鼻持ちならない弁護士なんですけど、この役をクリストフ・ヴァルツという人が演じてます。

このひと、どっかで見たことあるなーと思ったら、タランティーノ監督の「イングロリアス・バスターズ」で、へんてこなナチの将校を演じていたひと。

芝居、うまいなーと思ったら、ハリウッドの名門演劇学校、リーストラスバーグの出身でした。取材したことのある学校だけに、なんだから親近感を持ちました。

あらすじは、ケイト・ウインスレットとクリストフ・ヴァルツ演じる夫婦の息子が、ジョディ・フォスターとC・ライリーなる俳優が演じる夫婦の息子を殴り、ケガをさせ、その和解のために、4人が集まるところから始まります。

最初はそれぞれの理想にしたがって、けんかを避けようとしていたのに、少しずつずれていき、最後は悲惨なことに…。

そこへ持って行くまでが、笑いの連続でした。一瞬、コントかと思うほど、笑いへもちこむ筋書きがうまい。

それぞれのキャラクターのかき分けもよかったです。

大事な話の最中にも仕事の電話ばかりする、クリストフ・ヴァルツ演じる、忙しい弁護士に既視感がありました。そうです、うちの同居人です。いつでも携帯とipadを抱え込み、メールしたり電話したり。ホントにやんなっちゃいますねー。

そんなわけで、よくできた落語みたいな作品。

面白くて、辛らつで芝居もうまくて、見ている時間はたっぷり楽しめます。かなり上質のエンタメ作品です。

けどね。なんかね。かつてのポランスキー作品で感じたほどの、ドキドキ感、映画にやられて立ちあがれない感じ、そういうものがなかったです。

映画って楽しむものだから、それでいいんだっていえば、いいんだけど。

自分はいつでも、「ノックダウン」されたいんですよねー。

やられたい。

感動にうちふるえたいです。

そういう作品に出会えるように旅出るわけです。

そして、自分も作れるように。