山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

映画「ツナグ」

朋友・小林誠一郎氏、プロデュースによる、映画「ツナグ」を試写で見た。




10月6日(土)公開の、ヒューマン・エンターテインメント(とパンフレットにあった)である。

この世界には、死者と1度だけ会わせてくれる「ツナグ」という任を受け持ったひとがいるらしい。

青森のイタコさんは、死者が降りてきて、話をするらしいが、「ツナグ」は実際に死者を呼んできて、会わせてくれる、というシステムになっている。

この「ツナグ」は世襲であり、樹木希林さん演じるお婆さんから、孫の松坂桃李さん演じる高校生に譲られる。

「ツナグ」を通して、死者と再会するひとたちの物語であった。

ふと、思う。

私は会いたい死者がいるだろうかと。

身近で思いつくのは、ミニである。すみません、犬です。

「ツナグ」は犬にも会わせてくれるのだろうか。死者の側から同意がないと会えないそうだが、ミニは当然、しゃべれないからダメだろうか。

しかし。

やっぱり、ミニに会うのはやめようと思う。なぜなら、1度会ったら2度と別れたくないし、また、あの引き裂かれるような苦しみをもう一度やるのはいやだからである。悲しくてこっちが死ぬ。

では、他には…。

祖父に会うのがよかろうと思った。

祖父は私が8歳の時に他界している。私はおじいちゃん子であったので、いろいろなところへ連れていってもらったし、いろんな話も聞いた。

しかし、いかにせよ、8歳であったので、それほど難しい話はできなかった。

祖父は、洋画家であり、絵を描くことを仕事として、定期的に展覧会をし、週刊誌の表紙なども手がけ、美大で教えたりもしていた。生涯、絵描きであった。

かような人生であったから、生涯絵描きで生きるとはどうだったのか?など、今なら話ができそうである。

辛らつで家族を顧みず、好き勝手に生きたらしい。

血を分けた人間のなかでもっとも、気の合いそうなひとであった。

なので、「ツナグ」には祖父に会わせてもらうことにしよう。

…映画を見た帰り道、そんなことを考えながら歩いた。

けど。

やっぱり、私はどうしても会いたい死者はいないなーと思った。

これは、思いの残ったまま、誰かを死なせてしまった人への物語だろう。

不慮の事故や誤解や、想像を絶する不幸な事件により、命を落とす人がいる。それを受け入れられない人もいる。

そういうひとのためのシステムだろう。人間はとっても弱いので、頼れるシステムがあってもいい。

それによって救われるひとがいるはずだ。

「ツナグ」がいるんだ、と思えば楽になれるというのは、きっとよいことなのだろう。