山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

ほしいのは胸なんかじゃない。

久しぶりにジムへ。

頚椎を痛めているので、首に負担のかからないメニューにインストラクターの方に、変えてもらう。といっても、二つほど、マシンが変わるだけなんだけど。およそ二か月ぶりなので、やわにトレーニング。急に運動して、かえって体を壊すことになってもね、心配するなんて年の証拠。

一時間ほどマシンにからまった後は、お風呂へ。
普段より早い時間にでかけたので、ゆっくり入ることができた。でもって、ジャグジーのなかから見るとはなしに、他の女性たちの裸体を見ていた。

銭湯などにいってもそうだけど、誠にいろんな体、いろんな状態があるものである。グラビア雑誌で脱いでいる女性だけが女の裸ではないのだ。それぞれだよなあと思う。そんなふうに鑑賞していたら、やけにきつくバスタオルを巻いた若い女性が入ってきた。

割とみなさん、おおらかに裸身をさらしているので、かえってバスタオルを巻いた姿は目立ってしまった。流れで彼女を目で追いかけてしまう。彼女は鏡のついたシャワー台の前に座り、はらりとバスタオルをとった。それで、体を洗い始めたんだけど、その時になって、なぜ、彼女がタオルで体を隠していたかがわかった。たぶん、豊胸手術をしていたからだった。

確かめたわけじゃないけど、そこにあるのはどうみても人造のバストだった。その部分だけ、鑞細工のように妙に光っていて質感がちがう。体が動いてもバストは動じない山みたいにそこにあった。それに彼女が執拗に隠すので、確信を得たわけだった。だって、そうでなければ隠す必要のない、きれいな豊かな胸なんですもの。

お風呂なので、すっぴんであるから、彼女が普段どんな感じのひとなのかは簡単にはわからない。髪はかなり茶色で、カットもゴージャス系である。そんな彼女はどんな思い、どんな状況で豊胸手術に挑んだのだろうか。

少しでも魅力的になりたくて、少しでも誰かに選ばれたくて、胸をふくらませたのだろうな、と思う。そのときの気持ちを想像するとちょっとせつなくなった。ほんとに欲しいのは、大きな胸なんかじゃないんだよね。男はほんと、外見に弱いから、女は結局現実的になる。化粧をするのも整形手術をするのも、その程度の変化で男の態度がころっと変わることをつくづく知っているからだ。





多くの女性はかなり若いときにこのからくりを知る。で、そこから先、どんな戦略をとるかは人それぞれだろう。一般的には化粧して、きれに見える服を着て・・程度の技を学んでいくものである。ナチュラルを売りにすると決めた女性たちは、ノーメークで勝負をかける。

どっちも好みの問題ってことになるけど。ただ、胸をふくらませる、というのはかなり一般化したとはいえ、勇気のいる手段である。けれど、ひるまず、手術を選択した彼女。なぜ、そこまで思いきれたのかなあ、なんて考える。きっと彼女には、手術をすることで、変わるなにか、手に入るなにかがあったのだろう。あると思ったから胸を膨らませたのだろう。

ジャグジーのなかで、半ば湯辺あたりしながら、彼女を盗み見ていた。胸が大きくなることで、彼女のほしかったものが、手に入っていたらいいなあと思うのだった。