山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

クリエーターは二度だまされる。

突然ですが、自分は、わりと思い切り、だまされやすいです。

自分では冷静で知的で物事を客観的に見ることができるつもりでおりますが、どうにもそうではないらしい。よって、仕事やら恋愛やらで、「あきらかにおかしい」というひとからも、結構マヌケにだまされます。とりあえず、恋愛というのは、どこからが真実でどこまでウソかはわかりにくいし、だまされたとしても、ウソを一生通せばそれも本当になる…とも言えます。まあ、恋愛の話はよしとしましょう。最近、遠のいておりますし(笑)、なんかもう、それはそれって感じだし。

しかし、仕事上の嘘は、まずいですねー。これは詐欺とかってことにもなる。私の仕事場である映像業界は、「口約束」が多い。出版は、契約書を確実に取り交わすので、そういうことはないんですが、映像業界はもう、ほとんど口約束。で、その結果、被害を被るのは、一個人であるフリーランスの人間なわけです。具体的に言えば、映画監督だったり、脚本家だったりする。で、相手は制作会社だったり、映画会社だったりと企業ですから、一個人が企業と闘うのは、とてもしんどいわけですね。

そこで、弱き個人クリエーターたちが集まって、助け合おうってことで、映画監督協会とか脚本家連盟とかがあるわけですね。自分も両方に所属しています。脚本家連盟に入ったのは、今から10年くらい前に、ある映画の脚本を書いたけど、(よくある話ですが)、途中で制作とりやめになったんです。それで、制作会社がギャラを出し渋った。「勉強と思ってくれ」とか言われちゃって。で、困っていたら、先輩の脚本家が、連盟に入ることを薦めてくれて、いっさいを任せた。すると、一週間もしないうちにギャラが支払われました。いやーすごいなって思った。個人は弱いけど、協会は強し。以来、それほど、トラブルなく今日までやって来ました。

監督協会に入ったのは、(自分は映画1本も撮ってないので、最初は躊躇しました)、結構下心からでした。ちょうど初めての小説「ベイビーシャワー」を出版することになっていたので、「そうか、協会に入れば、たくさんの映画監督と知り合えて、そのうちの誰かが私の小説を映画化してくれるのではないか…」と思ったわけです。ははは。

でまあ、結論から言うと、今の時代、監督が強くおしても、そうそう映画化するのは難しいってことがわかったんですけど(涙)、でも、結果的に言えば、入ってよかったなーと思う。それは、「助けてくれるから」ってことではない。ものすごく単純に、同じくフリーの、同じくひとりぼっちで闘う監督たちと知り合えたことだと思う。友達ができた。どこの会社にも所属していないと、時々、ほんと淋しい気持ちになる。ちがう業界の女友達もいるけど、ひとりでなにかを作っているって部分で共感できないと、わかりあえない苦しみもあるわけで。そのあたりの気持ちを、同じ環境のひとたちと話せたり、慰め合えたりできるのがいいです。(もちろん、それが根本的な解決にならないことは知ってるし、クリエーターたるもの群れずにいろ!という考えもある。でも、実際、群れるわけではない)。そういう意味で良かったなーと思う。(いや、もちろん、監督協会もいざというときは、監督の味方になって企業と闘ってくれます)。

あ、テーマからそれた。自分の「だまされやすさ」について。

友人のプロデューサーが言うのには、クリエーターはみんなだまされやすいそうです。
「なぜ、だまされやすいのか?」と尋ねると、彼は言います。
「それは、チヤホヤされたいから、自分を褒めてくれるひとに近づき、その言葉に嘘を感じても、みないようにして、いい部分だけ聞こうとするからだ」と。

ほほう!納得してヒザを打ちました。

そうなんですよね。作り手は常に「ほめられたい」「理解されたい」ものなんです。自分の作った映画なり小説なりを、「良かった!」と言ってもらえるために、命賭けてる。だから、「あなたの作品が好きだ」と言われることは、恋愛的に「あなたが好きだ」と言われる以上に嬉しいんだと思う。(これって、作り手のひとはみんなそうじゃないかなー?私はそうです。自分の作品を好きだと言ってくれたひとのことは、割と手放しで信じます)。

ところが、世の中はそんなに甘くないのだ。本当は「けっ、くだらねーもん、書きやがって」と思っていても、いろんな情況で、「すっごく良かったです~」って言うひとも言う場合もあるってことだ。その嘘をなかなか見抜けないんですね。いや、見抜きたくないのかな。その心地よい嘘に酔っていたいのだな。ふむ。

で、再び前出のクールなプロデューサーに話が戻ります。彼曰く、だまされないためには、
「言葉ではなく、行動と結果を見ろ」

具体的に言えば、ギャラの金額と扱いに出る…ということです。口ではどんなに褒めてもギャラを値切ってくるってことは、ホントは認めてないってことなんですよね。「これくらい支払っておけばいいだろう」って意味。あとは、紙面上の扱い。クレジットでどう表記するかってことでしょう。俳優さんは、だから、クレジットの順番に相当こだわるけど、そういうことなんですねー。はい。

恋愛でもそこらへんは似ているよね。どんなに愛しているといっても、結婚から逃げようとするとか、生まれた子供の認知を拒むとか、生活費を入れないとかってことになってくると、その「愛してる」という言葉は、嘘じゃん!ってことになってくる。責任をとるつもりはないってわけで。

それでも、恋愛にはかような側面もあっていいと思うし、恋愛はちょっと狂気だから、嘘も混じり、保証もないからこそよし…とも言える。けれども、仕事はちがうでしょー。

ああ、書いてて疲れた。というわけで、仕事を頼まれると、自分は期待されているのだと思い、すぐ嬉しくなって、ニコニコしちゃう間抜けなんで、時たま、ひどい目に会ってます…というお話でした。で、そういうときには、「ひとりで悩まないで、相談しましょう」ってことで、監督協会さんなどにお世話になってます…という話でした、要約すると。ほほ。

そんなわけで、ひとりぼっちの世界は厳しくつらく、大変です。でも、いーのだ。好きで選んだ道ですもの。やってやろうじゃないの、最後まで。そして、この世は敵ばかりではなく、「一緒にやりましょう」って言ってくれるひとが、まだまだたくさんいる。(実は今日もひとつnew仕事キタ~!)
そういうひとたちを信じて、そして、もちろん、自分の書くもの、作るものを好きだと言ってくれるひとを信じて、めげずにいきたいと思います。がんばれ、わたし。

そんなけなげな(自分で言うな!)、私に応援クリックよろしくです。