山田あかねの一喜一憂日記

テレビディレクターをやりながら、小説書いてます。映画も撮りました。脚本なども書いてます。 本、買って下さいね。

映画「犬と猫と人間と」

今日は、数日前にDVDで見たドキュメンタリー映画「犬と猫と人間と」の感想です。



実はこの映画の存在は、公開の時に(2009年製作)知っていたのですが、あんまり見たいとは思えませんでした。それは、悪い作品だろうとか、そういうことではなく、見たら、泣いちゃう…ことがわかりすぎるくらいわかっていたからです。

自分は犬がとても好きなので、犬の出てくる映画は基本、見ません。一見、犬の映画って、犬好きが見そうですけど、自分はダメです。映画のなかで、犬が不幸な目にあったり、まさか死んだりすると、非常に傷ついてしまって、見ていられないからです。

たとえ、コメディであっても、「これを撮影するために、実際の犬が苦しんだのではないか」といらぬ想像をしてしまい、笑ってみることができません。

ええ、そうです。バカです。犬バカです。

映画「タイタニック」とかでも、(古い話で恐縮ですが)、船が沈む時、一緒に乗っていたはずの犬たちはどうなったのか…ばかりが気になり、肝心のレンアイにはあまり集中できませんでした。だってさー、人間の都合で船に乗せられたのに、まっさきに見殺しにされるのは犬でございましょう。

…というように、犬びいきなので、犬ものはさけてきました。でも、この作品は見ないといけないと思いまして。

自分も犬に関連したドキュメンタリー映画を作ろうと密かに画策しているのですが…とここに書いた時点で、全然密かにじゃないですが、そのようなわけで、先人の作品は見ることにしたのです。

まず、とてもよくできた作品でした。ドキュメンタリーとして優れているし、完成度も高い一方で、なんというか、監督の人柄が感じられる、希望のある作品でした。

監督の飯田基晴さんは、あるとき、見知らぬおばあさんから、猫や犬をテーマにした映画を撮ってほしいと頼まれます。このおばあさん…稲葉恵子さんという方は、路上で暮らす猫たちにエサを与えたり、避妊手術を施してきた、いわゆる、猫おばあさんでした。

彼女の願いは、猫や犬が置かれている日本の状況があまりにひどいから、それを啓発するような作品を作ってほしいというものでした。そのためのお金は出す…と。

稲葉さんが飯田さんを選んだのは、彼のそれまでの作品を見て、確信したそうです。「私は見る目があるのよ」と仰っていました。そして、それは当たることになります。とてもいい作品になっているからです。

特に犬や猫に関心のなかった飯田監督は、いろいろ調べ始め、撮り始めます。映画の構造自体も監督が、「日本の犬猫の現状」を知っていく過程のように、だんだん、深部へと進んでいくんです。

このあたりがとても見やすい。最初から、大きなテーマを掲げるのではなくて、「僕はなにも知らないけど、始めてみた…」という不安を持ちつつ、手探りで、犬猫事情に入って行くさまが、素直なんですね。

「犬は家族」と答える飼い主や、「ドッグショー」とか「犬の服」とか他愛ないシーンから映画は始まります。

自分は多少、日本の犬猫…いえ、犬事情については詳しいつもりでした。どれほどの罪のない犬が年間、殺処分を受けているか…。これは、自分の小説「もしも、この世に天使が。」にも書きましたけど、もう、想像しただけで、悲しくてイヤでした。

なので、ある種、この映画を見るのが怖かった。きっと、犬猫が処分される現場が撮されるだろう。たくさんの犬の死を見ることになるだろう。それはホントに見たくなかった。

そして、予想通り、飯田監督も、犬猫の処分の多さに行き当たります。なぜ、これほど多くの犬や猫が殺されないといけないか。どんなひとが、犬猫を捨てているのか。また、実際、処分する現場のひとたちはどんな風に思っているのか。

これらが、決して、告発調ではなく、描かれていきます。本当に悲しい場面もいくつかありました。目の前で殺される子猫。何匹も何匹も。死のトラックに乗せられる犬たち。

けど、そういうショッキングな場面を越えて、この映画がたどり着くのは、今はひどいことになっているけど、現場で、なんとかしようとしているひとたちがいる、確実にいる。そして、その努力は無駄ではない…ということです。かすかなでも力強い希望。

と同時に、犬、猫、とひとくくりではなく、名前のある生き物として、犬、猫を描いていることに心を打たれます。

とある動物愛護施設で出会った一頭の白い犬。その犬が訓練を受けて変わっていく様子が、愛情ゆたかに撮影されています。人間がひとりひとり違うように、犬も一頭、一頭違う、それぞれの名前を持った存在なんですよね。

そういう「生きる犬」の部分をきちんとおさえているわけです。「生き残る犬」の姿が収められている。そこにこの作品の希望と救いがあると思いました。

そんなわけで、予想通り、かなり泣きましたけど、でも、なんだろう、悲しいだけの涙ではなく、救いを信じる感動(おーあまり使いたくない言葉ですが)の涙を流しました。

と同時に、「おまえはどうするのだ」という問いをつきつけられました。

犬を一頭でも救いたい…そういう思いをあらたにしました。