山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

ちゃんこ屋騒動

くよくよしていても仕方ないので、神楽坂に美味しいちゃんこ屋があると誘われ、出かけた。

なるほど、ちょっとわき道に入ったところにある、なかなか風情のある店だった。

が、第一の不安がすぐによぎる。
個室を予約していたはずなのに、店の人には通じていず、小さな庭に面した小上がりの席に通される。
ま、いいじゃないか、外も見えるし。
と気を取り直し、ビールなどを頼む。

が、すぐさま第二の不安が。
通路を隔てた座敷で、宴会が行われているのである。
客層は、私と差して代わらぬ年代の比較的穏やかそうな人々であるから、大丈夫だろうと心をなだめるが、なんだかやっぱりうるさい。

しかも、聞くとはなしに聞いていると、彼らは私と同じ大学の同窓生であり、テニスサークルのOB新年会であることがわかる。
そんな時、注文したビールがなかなか来ない。

隣の宴会は、始まったばかりで、それぞれの近況報告が行われる。
現在の仕事、家族構成、今もテニスをしているか、を順に報告していく。
ここまでくると、私も隣の宴会に出席している気分である。

連れは、個室でなかったことで最初から機嫌が悪く、その上、隣は宴会、その上、ちょっと寒くて、会話は途切れがち。
ゆえに、私は隣の自己紹介をつぶさに聞くことになる。

第三の不安は、やっときたビールのあと、コース料理を頼んだけれど、ほんとに全然何も来ないことで、確実になる。
メニュー的には、単なるちゃんこやではなく、いろんな前菜や焼き魚、寿司なんかもコースに含まれていて、お楽しみであったのに、来ないんじゃ始まらない。

そんな折り、聞きたくない自己紹介は、さらに聞きたくない様相を帯びていた。
その時、話していた男は、子供自慢を始めた。
一人は、筑波大付属、一人は学芸大付属に通っているそうである。
(ここで、「すごいな」とか「おまえに似なかったんだな」とかのリアクションが入る)
さらに自慢は続き、そのうちのどちらかが、東女(東京女子大)に入ったそうで、その話を延々としている。

私も同じ宴会に参加しているのであれば、「そんなことが自慢かよ」」とちゃちゃのひとつも入れられるけれど、関係ないから口も出せない。
おまけに私と同じ大学の出身者であるけれども、テニスサークルの人たちゆえ、自慢話に対する批判がゆるい。
いつまでこんなつまんない男にしゃべらせておくのか。
少なくとも私がいた映画をつくるサークルだったら、こんな自慢話させないぞ。
(っていうか、しないし。っていうか、そんな大きな子供がいるひと少ないし。
 って、そんなこと、ここで張り合っても仕方ないけど)

そんなわけで、私も不機嫌に。
連れはもとから不機嫌であるし、
料理は来る気配がない。
庭に面した席は、下半身がスースーする。

と、突然、連れが席を立ったわけである。
「帰る!」
「え?」と戸惑う私を置いて、コートをもって出口へ。
仕方なしに、続く私。

出口近くの会計では、外に出ようとした連れと店の人がなんだかやりあっている。
うーやだなー。

連れは紙幣を出して、「帰るったら帰る」と、にわかやくざに。
店の人は、紙幣を受け取らず、平身低頭。
カウンターの客、料理を運ぶ女給さん、板前さんなどがしばし動きを止めて、注目する。

こういう時に限ってブーツを履いている私。
さっと外に出たいけど、ブーツのチャックがひっかかって、おろおろ。

結局、紙幣は受け取ってもらえなかったようで
(ということはただでビールを飲んだことになる)
二人で外へ。

いやあ、疲れた。
けれども、こういうことってほんの少しの気遣いで防げるのではないかと思った。
隣が宴会であるなら、予約の段階で言ってくれればいいのに。
それなら、少しは覚悟ができる。
また、30分も待たせるなら、時間がかかることを伝えるべきだ。

きっとほんの少し、ほんの少しのずれだったと思う。
食事が来ない、
寒い、
宴会がうるさい。

3つ重なったからね。

そんなわけで、ちゃんこや騒動でした。

しかし、その店のメニューはとても魅力的であったので、残念だった。
もう、いけないのかしら。