山田あかねの一喜一憂日記

テレビディレクターをやりながら、小説書いてます。映画も撮りました。脚本なども書いてます。 本、買って下さいね。

「マイバックページ」続き。

昨日、川本三郎氏の「マイバックページ」の感想を書いたけど、続き。

この本は、川本氏が、朝日新聞社時代に、学生運動家と知り合い、そのひとの起こした事件(殺人事件)によって、新聞社をクビになり、逮捕されるまでの出来事とその時々の思いが書かれている本である。

昨日も書いたように、丸谷才一さんに「比類なき青春の書」と言われるだけあって、それだけで、充分、若い時代を生きる青年の苦悩が描かれている良質の本ですが、一方で、企業ジャーナリズムとジャーナリストの関係について書かれた本とも読める。

記者個人が興味を持って取材したけれど、組織(新聞社)としては、その取材対象者を「犯罪者」と見なして、記事の掲載を拒否、犯人について知りうることを警察に報告せよ…と命じる。

一方、記者はあくまで、取材対象者を、「思想犯」ととらえ、それゆえ、記事の掲載を望み、警察への協力も拒否する。

結果、記者は逮捕され、会社はクビになり、記事も日の目を見なかった。

それから40年近くが過ぎて、なにが変わっただろうか…と考えた。

新聞社であろうと出版社であろうとテレビ局であろうと、「企業」であることは変わらないので、社の方針に合わない記事は掲載されないだろう。

警察に協力せよ…という要請も今でも出るだろうし、逮捕されたらクビだろう。

そこらへんはなにも変わってない。

まあ、「企業」のほうで変わったとしたら、その記事によって、「もうかる」としたら、掲載される可能性が昔より増えたかもしれない。

より、「売り上げ至上主義」になっているからね。その分、倫理観は減っているし。

と、絶望的なことばかり書いたけど、ひとつだけ、大きく変わったことがあるよな。

今だったら、クビにされても、逮捕されても、その記事を世に問うことができるよね。

もちろん、インターネットで。

無料で多くのひとに瞬時に読んでもらうことができる。

新聞社や出版社の社員じゃなくても、記事を書いて載せることはできるんだ。報酬はもらえないとしても。

そこが大きく変わったことだよなーと昨晩、ブログを書いたあとに感じた。

もし、今、同じような事態になったら、多くのジャーナリストは、ネットでの公表を選ぶだろう。実際、そういうひと多いし。

…だからといって、「マイバックページ」という本の魅力が少しも損なわれることはないんだけど。

ただ、少し、変わったよ。よくなった部分もあるよ…と70年代を生きた若者にささやきたい気持ちになったのでした。

自由な世界へようこそ。