一昨日、渋谷で、映画「スーパー8」を見ました。
スピルバーグがプロデューサーを務める、大スペクタクル映画です。
自分、普通、こういう傾向の作品、あまり見ないです。最新のCGとか3Dとかにあんまり興味のないクチです。
あくまで、リアリズム派。ストーリー派。人間ドラマ派です。
…わはは、うっとおしいでしょうが。
でも、この「スーパー8」を見に行ったのは、まず、タイトルからです。
スーパー8といえば、8ミリフィルム用のカメラですね。70年代末から80年代にかけて、世界各地でか、どうかわからないけど、少なくとも日本とアメリカでは、このカメラによって、多くの自主映画が撮られたわけですね。
自分も学生の頃、自主映画のサークルに入っておりまして、「8ミリ」と聞けば、「カメラ!」と自動的に想像するモノです。
だから、このタイトルを聞いた時、8ミリカメラで自主映画を撮っていた者たちがなんらかのかたちでかかわる作品なんだな…絶対、見なきゃ…と思いました。
で、公開終了ギリギリで見に行きました。
思った通り、主人公は、中学で自主映画を撮っている少年です。放課後、仲間とゾンビ映画を撮っている。それもかなり真剣にやってます。
物語の最初は彼らの映画制作ぶりから始まるわけですが、スピルバーグですもの、それで終始することなく、物語は大きな展開を迎えます。
このような、「仲間うちで、映画を撮っている話」は、実は映画界では、結構定番です。映画を撮っている自分たちの話を撮る…という入れ子みたいな構造ですが、どうもそのようなものを作りやすいようです。
余談ですが、かつて、ある映画のシナリオの賞に応募したとき、その審査員が言ってました。
「半分はやくざ、もしくは、やくざに限りなく近いモノが主人公、残りの半分は、業界人、つまり、映画撮っている男が主人公でした。なんて、こんな、みんな、似たようなモノを書いてくるんでしょう?」
ちなみに、その時、自分が書いたのは、やはり主人公はテレビディレクター(まんま、やん)でしたが、彼女が、北海道の競走馬を育てる牧場を取材する…というものでした。(もちろん、そのシナリオは入賞したことを自慢しておきます…笑)。
と、それはともかく、「映画を撮っていた僕ら」が主人公の作品は結構、多いんです。そして、そういう場合、たいていがですね、撮っている最中に仲間のひとりが死ぬ、もしくはヒロインが死ぬ。これ、すご~く、多い。
自主映画撮ってる間に友人で亡くなったひといなかったですけど、この手の作品のなかでは、誰かがかなりの確立で死にます。なんだかな。
「死」という強烈な出来事をもってこないと、物語を成立させられない…という作り手の弱さの露呈だと私は思いますが、それはともかく。
さらに、同じ展開になるのが、途中まで撮ったフィルムになにかが映っている…というものです。
この残されたフィルムがその後の物語をひっぱる…というのも定番です。誰でもちょっとやってみたくなる。
あ、これ、スチールカメラの場合も結構ありますよね。映画じゃなくて、小説だけでもすぐに2つの作品をあげられます。カメラマンを死んじゃったけど、そのひとが最後に撮したものがカメラに残っている…ってやつ。
このフィルムを現像すると真実が暴かれる…みたいなやつです。
定番です。
前置きが長くなりました。
話を「スーパー8」に戻しますと、もちろん、この映画でも、自主映画を撮影中のフィルムに、とある重要なモノが映ってしまいます。
主人公たちが撮影中に、大きな事故が起き、それに巻き込まれるわけですが、「その時、カメラはまわっていた」ということで、重大なものが映ってしまう。
物語は、自主映画を作っていた少年たちが、この大事故に巻き込まれることをきっかけに、大スペクタクルになっていくわけですが、それと平行して、映画づくりの少年たちの友情や恋愛も描かれる…という手法でした。
とにかく、展開が早く、お話が大きいので、まったく退屈する暇なく、楽しめた…と言えば楽しめましたが、ちょっと話が大きすぎ…みたいなところはありました。
でも。
主人公の少年少女たちが、必死に映画を作ろうとする姿にはじんと来ました。
それぞれの得意分野があり、それぞれが家庭の事情を抱えながら、撮影をする。
あーそういうもんだよなあと。
あの時、ゾンビ映画を撮っていた少年はその後、どんな人生を送ったのだろう。主人公の少年は?
ちょっとそんな気にさせる作品でした。
余談ですが、帰りのエレベーターのなかで、カップルがこの映画のタイトルについて、話あっていました。
「スーパー8ってなんだろう。少年たちは8人じゃなかったし。あの怪物が8本足ってわけじゃないし」
「そうだよね、なにが、スーパーで、なにが、8なんだろう?」
うー!
君たち、スーパー8と言えば、8ミリカメラの名前だよ。あの少年たちが大事そうに使っていたカメラだよ。
事件の重要な部分を撮ってしまったカメラのことだよ。そんなことも知らずにこの映画を見に来たのか。
もしかして、「フィルム」って言葉を知らないんじゃないか。生まれた時からデジタルカメラの映像しか見ていないのか。
…と何度話しかけようと思ったことか。
しかし、エレベーターは静かに地上に舞い降り、私は口をつぐんだまま、帰路につきました。