山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

自分で脱ぐから

昨晩、桐野夏生さんの「天使に見捨てられた夜」を読んでいたら朝になってしまって、それから眠って、起きたら夜でした。

今頃になって桐野ファンになったので、いろいろ本を取り寄せている。新潮社から出ている「THE COOL」という桐野夏生特集の雑誌なども読んだ。これに斉藤美奈子さんが、「OUT」がなぜ、直木賞を逃したかについて書いていて、面白かった。

ひとことで言うと、桐野作品ってかなり挑戦的。挑戦する相手はずばり、オヤジだよねえ。彼女の小説に出て来る主人公は、これまでの女性作家が描きがちな「オヤジ受けするタイプ」ではない。もちろん、美人だったりもするんだけど、彼女たちの立ち居振る舞いはオヤジの想像の外にあると思う。

「OUT」にいたっては、主人公は弁当工場に勤めるおばさんたちだ。誰一人もオヤジをそそることができないタイプ。まず、これだけでアウトでしょ。

「天使~」の主人公もまた、オヤジ受けしないタイプ。まず、AV会社の社長と寝ちゃったりする。だって、いくら金持ちでもハンサムでもAVなんか作っている奴だめじゃん、というオヤジ界のヒエラルキーがある。自分達は風俗の女性大好きなくせに、風俗の男性に対しては、あからさまに軽蔑の視線を送るからね、オヤジは。

でもって、斉藤美奈子さんも書いているように、「やってしまったからといって、その男をひきずらない」ってのがもっともおやじに嫌われる部分でしょう。長らく日本文学って、『女はやったらこっちのもん」風なのが好まれてきたからね。いやがりながらも溺れて行く・・ってやつ。

性欲は性欲として、処理できる女性主人公の登場なわけだよ。
そんなことを考えていたら、ある共通の言葉に気づいた。

「自分で脱ぐから」

このセリフが出てくるのは、「天使~」では主人公のミロがAV会社の社長にレイプされそうになる時。

同じセリフを角田光代さんの「空中庭園」に出て来る娘からも聞いている。彼女も又、レイプまがいの行為を強要されそうになるとき、こう言っているのだ。
AVなどでもレイプというとキャーキャー騒ぐわけで、それがまた、お楽しみなのでしょうけど、「とっととすませてくれ」っていう気持ちはよくわかる。

と、ちょっと品のないお話を続けてしまった。

今日は嬉しいことがもうひとつ。 尊敬するフェミニストのU・Cさんから手書きのお手紙を頂戴した。
神棚にあげて家宝にすることにした。(神棚ないけど)

自分の本を送ったので、受け取りましたというご挨拶とUさんが企画参加されている冊子を頂いた。
私ごとき作家になんて律儀な。
とてもとても嬉しい。

「天使~」のなかにも、捜査がいきずまった時は、とりあえず、できることを順番にして待っていると、可能性は開けて来るものだ、というくだりがあったけど、そんな気分です。

頑張って書いて本になったけど、ちょっと落ち込み気味で、なかなか次のことをはじめられないでいた。このようなお手紙を頂けると、生きててよかった~と本心から思えるのでした。