山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

女とはコスプレである。

中村うさぎ「私という病」/中村うさぎ・小倉千加子「幸福論」の2冊を読む。

前者は、言わずとしれた、中村うさぎさんがデリヘル嬢になった体験記だ。「新潮45+」に連載当時から気になっていたけど、加筆されたそうなので購入。一緒に「幸福論」も買ってしまった。

いやいや、とても興味深かった。というか、考え込んだし、ひざを打つシーンもありました。一番納得したのはさ、「デリヘル嬢そのものの体験より、自分がデリヘル嬢になるといったことに対する、男どもの反応だった」というくだり。

古くは落合恵子さんが、「セカンドレイプ」のなかでとりあげているように、レイプそのものもつらいけど、「あいつはレイプをされた」って騒がれることが、同じようにつらいのだ、ということ。

これらの、「一度性的におとしめられた女性」に対する、世間の(正しくは男の)態度ってのは恐ろしいんだよね。最近では、民主党の議員が「元キャバクラ嬢」ってことを、いやっていうほど書かれてた。ただ一度でもキャバクラで働いたら、刻印を押されるんだよね。

それは、「こいつはなにしてもいい女だ」という意味らしい。デリヘル体験のあと、にやにやして近づいてくる編集者がいて、気持ち悪かったってうさぎさんも書いていた。ほんとにね。いるよ、こういう奴。

この刻印について、女性なら、たいてい肌で知っている。その恐ろしさも。私も同じような目に遭いましたよ。それは、「AVを撮った」という噂ですね。実際はAVは撮っていないくて、ヌードでからむシーンのあるVシネを撮っただけだったんですが、それをスポーツ紙が派手に記事にしたおかげで、その後5年くらいに渡って、「AV撮ったの?」と言われ続け、あげく、「出たの?」というのまであり、さらにそれを理由に番組おろされたこともありました。ま、今となっては過去の話ですけど、ほんと、一度、そっち側にいった女に対する、男たちの視線の変わりようというのは、恐ろしいほどであります。

それから、納得したのは、「女はもはやコスプレである」ということ。
もちろん、昔ながらの女らしさを内面化している女性もたくさんいるとは思うけど、いったん、目が覚めてしまうと、「女らしく」ふるまうことって、コスプレ感ぬぐえないんだよね。私も仕事の時は、ユニセックスの服を着て、取材して、ロケして編集してたりする。で、仕事終わって、ちょっと女っごっこでもしようかな、という気持ちでミニスカートにハイヒールで遊びにいったりするんだよなあ。

どっちがホントの自分かなんていうことではなく、ふたつが同居してせめぎ合っている。だから、いつも息苦しいんだよね。

そのような「ほんとの今の女性事情」がたくさん書いてあって、う~ん、たくさん、ポストイット貼りながら、読みました。デリヘルやるっていったら、北野武さんが、「そんなん作家のやることじゃねー」と言ったそうだけど、作家かどうかなんて、どうでもいいことなんだよね。そんな立場に縛られず、自分の疑問をそのままに行動し、体験し、正直に書いている、中村うさぎというひとは、たぶん、女性のトップランナーなのだとしみじみ思った。

かっこいいす。